黒木純司(写真提供・千葉ロッテマリーンズ)
黒木純司(写真提供・千葉ロッテマリーンズ)

 12月になると、連日のように各球団の新人選手たちの入団発表が行われ、彼らの初々しい抱負やプロ入り後の目標がテレビや新聞などで話題になる。

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 1997年のオリックス1位・川口知哉や98年の阪神1位・藤川球児のように、監督も思わずタジタジになる仰天発言で“ビッグマウス”と呼ばれたつわものもいるが、2位以下の指名選手の中にも、ドラ1を完全に食ってしまうようなユニーク発言で注目を集めた選手が目白押しだ。

 1年目の目標に「(セ・リーグ)最多勝を狙いたい」と豪語したのが、97年の中日7位・白坂勝史だ。

 関東学院大時代は最速145キロ左腕として全日本大学野球選手権4強入りの立役者となり、一時は巨人が3位指名で獲得を狙う動きも見せたほど。だが、4年秋のリーグ戦で不調に陥ったことから、上位指名はなくなり、星野仙一監督も「(7位で)よく残っていたよ」と獲得できた幸運を喜んだ。

 白坂本人も12月1日の仮契約の席で「7位で獲っていただいたんですけど、あとでそんな選手じゃなかったと思われるような活躍をしたい」とプロでの飛躍に意欲満々。

 そして、同18日の入団発表では、さらにボルテージが上がり、「(1年目は)最多勝を狙える位置につけて頑張りたいです」「他球団も含めて(ドラフト)上位選手には誰にも負けない自信がある」「秋には山本昌さん、今中(慎二)さんと僕で左腕トリオと言われたら最高ですね」「毎年オールスターに出て、ファンから愛される投手に」と次々に大胆発言が飛び出した。

「最初だから、かましとこうと思ったんです」という白坂に、石井昭男スカウトも「あれぐらい言っていいんです。夢に向かって努力すればいい」とその心意気を良しとした。

 当然、翌日の中日スポーツでは、この発言が1面で紹介され、1位・川上憲伸を完全に食ってしまう。

「あんなふうに新聞に出るとは思わなかったですよ。ビッグマウスになっちゃった。僕はそんなキャラクターじゃないですから」と困惑した白坂は、「1日も早く(1軍の)マウンドに立ちたいですね。最多勝はあくまで目標ということにしてください」と下方修正したが、残念ながら、在籍3年間(99年は台湾・兄弟でプレーし、2勝3敗)で1軍登板なしのまま退団となった。

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久保田龍雄

久保田龍雄

久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

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「イチローをケチョンケチョンに…」