自民党の有志議員でつくる「選択的夫婦別氏制度を早期に実現する議員連盟」設立総会
自民党の有志議員でつくる「選択的夫婦別氏制度を早期に実現する議員連盟」設立総会

「保守主義」を定義したのは、フランス革命を批判したアイルランド出身の政治哲学者のエドマンド・バークだ。

「どれだけすぐれた人たちが革命を実行しても、理想的な社会を作ることはできない。なぜなら人間は不完全だから、という考え方です。むしろ伝統的な慣習や良識といった経験知の中に英知があると考え、漸進的改革を唱えるのが保守の思想です」(中島教授)

 リベラルはどうか。ドイツで1618年から30年間続いた「三十年戦争」が大きな意味を持つという。欧州のキリスト教徒の価値観をめぐる戦争は、48年のウェストファリア条約締結でようやく収まった。このとき欧州の人々が確認したのが、リベラルの概念だ。

「宗教上の思想信条の違いによって、相手をせん滅するまで戦い続けざるを得なくなった経験をしたことで、価値観の異なる他者に寛容になり、互いの権利を保障する概念を確認し合ったのが近代リベラルの起源です」(同)

 中島教授は「リベラルと保守は相性が良い」と言う。

「保守派の懐疑的な人間観は自分にも向きます。自分も間違えているかもしれないので、自分とは異なる見解にも耳を傾け、落とし所を見つけて合意形成を図る。これが『保守政治』です」

 1990年代前半までの自民党の保守本流の政治家は「リベラル」を自認し、野党とも合意形成を図ってきた。転機は冷戦の終結だ。左派を指す“革新”がリベラルに置き換わったのだ。96年に民主党が「リベラル新党」として旗揚げした頃から、リベラルが自民党に対する、もう一極の政治勢力を指す言葉になった。だが、「これは誤用です」と中島教授は言う。

「左派がリベラルだという認識になり、保守はアンチリベラルのようになっていきましたが、リベラルの反対は保守ではありません。リベラルの反対語は“パターナル”です」

 リベラルは他者への寛容と、それぞれの価値観の自由を重んじる。その反対は、強権によって個人の価値観に介入するパターナル(権威主義)だという。

 中島教授は、いまの政治家をリスクの“社会化派”か“個人化派”か、価値観が“パターナル派”か“リベラル派”か、という枠組みで分類すべきだと唱えている。リスクの個人化、社会化は「小さな政府」か「大きな政府」を志向するかの違いだ。リベラル派は夫婦別姓や同性婚など個人の価値観に寛容である一方、パターナル派は特定の価値観を強制する。

「安倍・菅政権では、『パターナルな価値観』でかつ『リスクを個人化する』政治が続き、これが自民党の主流になりました。私たちがいま、『保守』と認識している政治家はこのゾーンの人たちであり、本来の保守とは大きく異なります」(同)

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