僕の親友とも呼ぶべき男がいる。A君としよう。彼は2011年に芸人を辞めた。10年近く続けた芸人を辞めたのだ。

 僕は過去に「芸人交換日記」という本を書いている。売れない若手芸人が夢に向かって突っ走るが芸歴10年目で解散していく話。そこで僕は書いている「夢を諦めるのも才能だ」と。

 ずっと追い続けてきた夢を諦めることも勇気がいる。才能がいると思って書いた。

 そうは書いたが、続けている人を応援するつもりで書いた。が、結果、その本が発売になったあと、A君はやめるという決意をした。A君にエールを送るつもりで書いていたのだが、結果、辞めてしまった。

 そこから10年。A君は、実家の民宿をやっていたが、結局東京に戻ってスナックをやったりタクシー運転手をやったり、また実家に戻ったり。たまに会って話すと、やはり頭の横に芸人の亡霊がずっと憑いているような感じだった。

 辞めてもずっとつきまとう。辞めても辞められない。

 そんなA君が先日、10年ぶりに元相方と舞台を踏んだ。自分のやりたいことを田舎で続けながら、たまに舞台を踏むのだろう。

 錦鯉の優勝は、諦めかけていた人にたくさんの夢を与えるはずだ。続けることが一番しんどい。続けることが才能だ。ファイト!!

 ■鈴木おさむ(すずき・おさむ)/放送作家。1972年生まれ。19歳で放送作家デビュー。映画・ドラマの脚本、エッセイや小説の執筆、ラジオパーソナリティー、舞台の作・演出など多岐にわたり活躍。パパ目線の育児記録「ママにはなれないパパ」(マガジンハウス)が好評発売中。毎週金曜更新のバブル期入社の50代の部長の悲哀を描く16コマ漫画「ティラノ部長」と毎週水曜更新のラブホラー漫画「お化けと風鈴」の原作を担当し、自身のインスタグラムで公開中。コミック「ティラノ部長」(マガジンマウス)は発売中。「お化けと風鈴」はLINE漫画でも連載スタート。YOASOBI「ハルカ」の原作「月王子」を書籍化したイラスト小説「ハルカと月の王子様」が好評発売中。長編小説『僕の種がない』(幻冬舎)が発売中。作演出を手掛ける舞台「怖い絵」が2022年3月に東京・大阪にて上演。

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