釜ケ崎の三角公園で昼食の炊き出しに並ぶ労働者たち(2006年)
釜ケ崎の三角公園で昼食の炊き出しに並ぶ労働者たち(2006年)

 2~3年前にホテルの建設計画を聞いたという西成区商店会連盟会長の村井康夫さんは星野リゾートの新今宮進出を「歓迎している」と話す。

「あの土地は、星野リゾートが来る前は広大な空き地で、全く人通りがなかったし、テントを張って寝ている人たちも多かった。それがきれいになったわけだから、大きくイメージも変わると思うね」

 一方で、新今宮駅を挟んだ南側の西成区の方へはあまり企業のアプローチがないとも話す。

「西成の方には、企業が関心を示せなくても仕方ないというような、ある種の諦めみたいなものがあります。(星野リゾートの)ホテルが建てば地域全体として確実にお客さんは来ますので、西成の方にも人が訪れてくれるだろうという期待感はあります」

 あいりん地区周辺では、複雑な声も上がる。あいりん地区(通称・釜ケ崎)の野宿生活者らへの支援活動を行う釜ケ崎支援機構の事務局長松本裕文さんは、コロナ前にインバウンドの観光客が大幅に増えた状況をふまえ、こう語った。

「野宿されている方の多くは『なるべく邪魔にならないように』と遠慮して生きていらっしゃるので、観光客の増加によって多少居づらくなることはあるんじゃないかと思います。ただ、簡易宿所を続けていこうという大家さんはたくさんいますから、これからも生活に困窮した人が集まってくる状況は当分続くでしょう。釜ケ崎は、地縁血縁の煩わしさから離れたい人にとって、息苦しい社会からの逃げ場として必要とされ、機能してきました。都市開発と貧困者という単純な対立構造ではなく、もともと住んでいる人と観光客がどう共存していくかを考えなければならないと思います」

 数多くのホテルを取材してきた瀧澤信秋さんは、星野リゾートの「ブランド力」が地域に貢献するメリットをこう話す。

「あの地域には治安が悪いというイメージがありますが、有名ブランドである星野リゾートの中でもご当地にフィーチャーするOMOが入ることは、ある種安全性の担保につながる。今まで自分たちだけでは行きにくかったけど、星野リゾートが案内してくれるのであれば安心できるとなれば、星野リゾートが持つブランド価値や知名度が生かされると思います」

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