佐々木チワワさん。撮影場所は歌舞伎町にあるホストクラブ「冬月グループ FUYUTSUKI -DeZon-」(撮影/岩下明日香)
佐々木チワワさん。撮影場所は歌舞伎町にあるホストクラブ「冬月グループ FUYUTSUKI -DeZon-」(撮影/岩下明日香)
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 雑多なビルがひしめき合い、深夜まで消えないネオン……日本一の歓楽街といわれる新宿・歌舞伎町。慶応義塾大学湘南藤沢キャンパスに在学する佐々木チワワさん(21)が、初めて歌舞伎町に踏み入れたのは、高校1年生の大みそかだった。「家に居たら親戚のいる田舎に連れ出される」と思い、プチ家出をしたのがきっかけだった。

 10代から、移ろいの激しい歌舞伎町の人間模様を目の当たりにし、大学に入ってからはホストクラブに通いだした。その経験を基に、研究対象としては扱われにくい歌舞伎町の文化「社会学」として探求すべく、フィールドワークを重ねている。

 そして、歌舞伎町をよりどころとするZ世代の若者にフォーカスした新書「『ぴえん』という病 SNS世代の消費と承認」(扶桑社)を12月に出版。未成年の自殺、ホームレスへの暴行事件によりメディアで取り上げられるようになった「トー横キッズ」についても、ニュースでは報じられない“実態”を記した。本には「10代、20代の文化や考えている価値観を少しでも知って、間違えやすい私たちを大人に導いてほしい」という思いを込めたという。

 新書のタイトルにある「ぴえん」とは、泣く様子を表す擬態語「ひんひん」や「ぴえーん」から派生したなどと諸説あるが、「やばい」や「エグい」など、いつの時代にもある汎用性の高い若者言葉。「ぴえん」とは何か、と聞かれれば、それを知らないことに嘆いて「それはぴえんですね」と返すように使う。

「『ぴえん』は曖昧な言葉として使われ、前後の文脈で意味を判断します。少し前は『卍(まんじ)』が同じように使われていました。まさに古文の単語みたいですよね」

 チワワさんは2歳までに親から絵本を1000冊読み聞かされる幼児教育を受け、小中高一貫の学校に通っていた。勉強よりは読書が好きだったが、ただ窮屈な毎日だったという。

「高校1年生の時に外の世界を知りたくてビジネスコンテストに参加したり、ライター活動を始めたりしているうちに、ペンネームや学校のブランド名を背負うのに疲れてしまって……。歌舞伎町に行ったら、ただ若いってだけで、『おねえさん、遊ぼうよ』って声をかけられる。内面に干渉されないのが楽だったんです」

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「お金を使わなければ生きている価値がない」