佐々木チワワさん
佐々木チワワさん


 
 大学へ行く必要があるのかと疑問を抱き、高校も中退して仕事をしようかと悩んだ時期もあった。親とケンカして、母親から「怒りが収まらない」というワードの文書ファイルを受け取り、「なんだこのロジックなケンカは、と思いつつファイルを開いたら中身は感情論」だった。負けじと、パワポで反撃のプレゼンを母親に送り返し、自分の意思を伝えたこともあった。親子ゲンカの仕方も独特だ。

「雑誌に記事を書き始めた時期は内容的にも反対されていましたが、今では応援してもらっています」

 大学入学後、18歳以上の年齢制限があるホストクラブがついに解禁となった。歌舞伎町で一緒に遊んでいる友達と「いつかは行ってみたい」と話し楽しみにしていたが、ある日、思いがけない場面に遭遇する。興味本位で自殺の名所と知られるビルの屋上に友達と行くと、髪の長い女性がバランスを崩したら落ちそうな状態で立っていた。なだめようと話を聞くと、女性はホストにお金をつぎこむ「ホス狂い」だった。女性に「お金を使わなかったら私って生きている価値がないじゃないですか」と泣きつかれた。

「『やりたいことがあります!』って意気込んで大学に入ったものの、モラトリアム状態で、目標を見失ったんです。だから歌舞伎町に遊びに行ったんですけど、あの時、偶然にも出会った女性に泣きつかれたのが忘れられなくて。それ以来、この町の消費と価値について知りたいと思うようになりました」

 他大学に歌舞伎町の社会学を教える教授がいると知って、毎週授業を最前列で聴講した。ある教授に自分も歌舞伎町を研究したいと相談したら、「踏み込んだとしても、傍観者でしかいられない」と諭された。でも、10代から歌舞伎町に関わり続けてきたからこそ、同世代の視点から考察できるのではないかとフィールドワークを続けた。

 歌舞伎町では、未成年の自殺やホームレス暴行、傷害致死事件などが相次ぎ、『新宿TOHOビル』(旧コマ劇場)周辺の路上にたむろする若者を「トー横キッズ」と称してメディアが取り上げるようになった。チワワさんは「トー横キッズ」と名づけられる前から、彼らの存在を知っていた。

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「トー横キッズ」も今はまったくの別物