参画局に設けられた専門委員会も徐々に数を減らした。とくに「基本問題・影響調査専門調査会」の終了は非常に痛かったと皆川さんは指摘する。ジェンダーの視点を政策に入れていくためには政策の男女への効果の違いを調べる必要があるからだ。

「これもバックラッシュ。ポリティカル・ウィル(政治的な意思)が逆向きだったのですから進むはずはありません。意思決定層に女性がいません。女性議員を増やすべく法律をつくろうとしても、当の国会にも女性が少ないのですから、その難しさたるや、です」

 皆川さんは「ポジティブアクション」(男女の不均衡を解消するために個々の組織が行う積極的な取り組み)の必要性をあらためて強調する。

「『2030』が掲げられた年の検討会報告書には、『ポジティブアクションの実施により、目標が実現しているはずだ』と書かれています。でもそうはならなかった。積極的改善措置は基本法の条文に明記もされているのに、これまでも現在も実効性が弱すぎる。ここが問題です」

 改善に向けて、本気の取り組みをしている組織もある。東京工業大学は今年7月、「主要8部局で女性教員を公募する」と発表した。すべて教授、准教授ポストで任期なし。部局単位ではなく8部局という大学全体にわたっての公募は異例だ。

■女性限定公募のねらい

 日本における女性研究者の割合は17.5%。ジェンダーギャップ指数1位のアイスランド(46.4%)や30%を優に超える英国や米国とは大きな開きがある。東工大では教授、准教授、助教あわせて1千人強のうち、女性は約100人と約10%。「2030年までに女性教員を20%に」との目標を掲げるが、そんな中での女性限定公募のねらいは何か。総括理事で副学長の佐藤勲さんはこう話す。

「近い将来にダイバーシティーを実現し、女性の研究者がサステナブルに活躍するためには、その『場』を用意しなければなりません。しかし『そのためにはどういう環境が望ましく、どんな政策を打たなければならないか』を考える女性研究者が、そもそも少ないんです」

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