■「俺にはつぼを売るな」
1992年、歌手の桜田淳子さんらの合同結婚式をきっかけに旧統一教会がメディアで取り上げられるようになると、女性の家族が信者であることに周囲も気づき始める。
「授業中に先生が『お前も合同結婚式に出るの?』『俺にはつぼを売るなよ』と言って笑いを取るようなことをしたり。誰も信用できなくなってしまった」
違和感を抱えながらも、親に愛されたい思いで信仰しているふりを続けた。18歳のときには、2世信者である日本人男性と合同結婚式に参加。だが、父親への恐怖からいやいや参加したという相手とはうまくいかず、結婚には至らなかった。
26歳で参加した2度目の合同結婚式で、「教祖が指をさした」韓国人男性と出会う。
「夫は、殴る蹴るといった暴力はもちろん、性欲や自尊心を満足させなければ不機嫌になって暴れまわる人でした。出産後は子どもに暴力を振るい始め、夜尿症や背中一面に湿疹が出るようになってしまったんです」
耐えかねて実家に戻ると、両親が言ったのは、
「愛で乗り越えろ」
の一言だった。女性は言う。
「夫が私を苦しめるのも神様からすると意味があることで、愛で彼の悪い行いを変えることが神の願いだと言うんです。『だからしかたない』って。なんなんだという思いでした」
その後、全国霊感商法対策弁護士連絡会の弁護士とつながり、夫とは離婚して旧統一教会も脱会した。だが、祝福2世として生まれた事実からは逃れられないと吐露する。
「安倍晋三元首相の銃撃事件が起きたあと、教団関係者から母親が生前活動していたときの手帳や政治家と写っている写真を引き取りたいと連絡がありました。私は信仰をやめたつもりだったけど、2世であることはやめられないんですよね」
(編集部・福井しほ)