漫画家&TVウォッチャーのカトリーヌあやこ氏が、「ノンレムの窓 2022・秋」(日本テレビ系 10月9日22:30~)をウォッチした。
* * *
バカリズム原案(作品によっては脚本も担当)の新感覚ショートショートドラマシリーズ第2弾。
日常に生まれるモヤ~ッとした事案を、バカリズムが丹念に突いてくる。特に注目するのは「言葉」がもたらす混乱だ。
前回の「カスタマイズ」は、松岡茉優演じるカフェ店員が、寿限無寿限無的カスタマイズオーダー(グランデローファットミルクノンホイップチョコチップバニラクリームフラッペカプチーノ的な)に翻弄(ほんろう)されるお話。
そして今回は、報道番組のアナウンサー・宮川志帆(木村文乃)を悩ます「放送禁止用語」が急増する世界だ。「殺人、強盗、地震」など過激な表現はご法度。
ありとあらゆる方面に配慮した結果、彼女が読むニュースは、「関東近辺にある24時間営業の店舗に、一人の人間が刃物を好ましくない方法で使用し、店員に好ましくない言葉をかけ、店側に好ましくない結果をもたらしました」。くどい!
スポーツニュースは「すべてのスポーツを等しく応援するため」に何の競技か伏せて、ただ「日本勝利」だけが伝えられる。大本営発表か。
「どこかの動物園で生まれた何かの赤ちゃんです」というほのぼのトピックも、価値観の押しつけになるため「かわいい」は放送禁止用語。
「病院」の「病」の字が不謹慎だと「楽園」に言い換えられ、アナウンサーは「ただ情報を言う人」、「芸人」は「コメディーヒューマン」となる。
言い換えれば言い換えるほど、うさんくさくなる言葉のマジックよ。バカリズムの目が向けられているのは放送禁止用語そのものではなく、それを操る人間側だ。
クレームを見越して発動される過剰な配慮。なんだったら現実のテレビ界も、ほとんどこの物語の領域に踏み入れてるかもしれなくて。