東尾修
東尾修
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 西武ライオンズの元エースで監督経験もある東尾修氏は、ヤクルトのリーグ優勝について、監督の手腕を評価する。

【写真】胴上げされるヤクルトの高津臣吾監督

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 セ・リーグはヤクルトが2年連続9度目のリーグ優勝を決めた。ヤクルトの連覇は野村克也監督時代の1992、93年以来、29年ぶり2度目だという。ノムさんを恩師としている高津臣吾監督にとっても、また一つ、ノムさんにいい報告ができるんじゃないかな。

 私は毎回、ヤクルトの試合を見ていないから、采配面はわからない。ただ、今年の高津監督の起用の仕方を見ていると、本当に「我慢」したなと感じる。昨年終盤にチームの柱となった奥川恭伸もいない。投手では2020年ドラフト1位の木沢尚文を中継ぎに抜擢し、チーム最多登板と欠かせない戦力に定着させた。野手では高卒3年目の20歳の長岡秀樹を開幕からスタメン起用して使い続けた。遊撃手はまず守備がしっかりした選手でないと、長く起用することはできない。高卒から2年間、守備に問題がないとわかった時点で、高津監督は起用し続けることを決断したのだろう。

 新しい実績のない選手を起用し続けるには、指揮官の覚悟がいる。そしてその覚悟が間違ったものであったら、チームは負ける。腹をくくるという言葉が当てはまるかは別として、自分の見立てが間違っていたら、それは敗北に直結するものだ。

 ただ今年の場合、他球団のふがいなさも追い風になったと思う。7月頭の時点で2位に13.5ゲーム開いた。この直後にヤクルトは新型コロナウイルスが蔓延し、失速するのだが、普通に見積もっても2カ月以上低迷していないと追いつかれない差である。上にいるチームというものは、ある程度の負け数を計算して戦うことができる。調子の上がらない山田哲人を休ませたりできたのも、他球団の突き上げがなかったことも大きかったように思う。逆に他球団は、突っ走るヤクルトに追いつこうと、早めに投手交代をしたり、勝負をかけたりしなければならなくなった。

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