■ピンチでの投球は圧巻
前出の通信員はこう絶賛する。
「同一シーズンで規定投球回数と規定打席をクリアするなんて、大リーグの長い歴史のなかでも考えられない快挙です。二刀流で2年連続結果を残すことは非常に困難なことにもかかわらず、さらなる進化を遂げている。技術だけでなく心身もタフで本物のプロフェッショナルです。こんな選手は二度と現れないでしょう」
「大谷の価値をさらに高めているのが、投手として見せるパフォーマンスです。昨季の後半戦から制球力がグッと良くなりましたが、今年はそのクオリティーを継続しつつ、直球の球威が増しているように感じます。特にピンチでギアを上げたときの投球は圧巻です」
超一流と呼ばれるエースたちも、本調子の状態で登板できる回数は数えるほどだ。状態が悪いときや悪条件のグラウンドコンディションでも抑えられるかで、投手としての真価が問われる。大谷はこの超一流の領域に足を踏み入れている。
象徴的な試合が、9月23日のツインズ戦だった。「3番・投手兼DH」で先発したこの試合は気温が12度で指がかじかみ、大量の雨でマウンドもぬかるんでいた。初回から抜ける球が目立つ。四球、死球、四球で満塁のピンチを作った。だが、最少失点で切り抜けると、二回以降は立ち直った。スライダーを軸に四回から五回にかけて5者連続三振を含む7三振を奪い、自身初のシーズン200奪三振に到達。野茂英雄、松坂大輔、ダルビッシュ有(パドレス、36)に次ぐ日本人投手4人目の快挙を達成した。(ライター・梅宮昌宗)
※AERA 2022年10月10-17日合併号より抜粋