──そもそもバラエティー番組に進出するようになったきっかけは?
8年ほど前ですかね。当時は若いこともあって歌舞伎でもぜんぜん名前を知られていませんでしたし、お役もあまりいただけていなかったんです。僕の家は、代々続く歌舞伎俳優の家柄ではないですし。
ところが大抜擢で、中村勘九郎さんと中村七之助さんと3人の主演舞台(コクーン歌舞伎「三人吉三」)を上演させていただけることになりまして、その宣伝で3人で「SMAP×SMAP」のビストロSMAPに出演する機会をいただいたんです。すでにおふたりは有名で、そこに僕だけがよくわからない存在として入っている状態(笑)。ここは目立たなくてはと思いまして……。
──そして自由なぶっ飛びキャラで暴走して、バラエティー界の新星としてブレークなさった、と。
意外だったのですが、SMAPのみなさんも僕をしっかりイジってくださいまして(笑)。バラエティー番組のお話をたくさんいただけるようになったんです。
そこからですよね。みなさんに僕の存在を知っていただくことができ、歌舞伎のほうでも役がつくようになってきました。おそらくバラエティーがなかったら、いまだに歌舞伎俳優としてもだめかもしれない。ですので、バラエティーには感謝しています。
──最後に、歌舞伎はどんな存在ですか?
どのお仕事も、すべて俳優の仕事として取り組んでいて、分けているつもりはないんです。ただ、やはり歌舞伎に関しては、僕の役者としての基礎をすべて築いてくれた「ふるさと」のような特別な場所ですよね。
どんな活動も、最終的には、歌舞伎でこんなことをやりたいという目標につながっていくのではないかと思います。そもそも松也という名前は歌舞伎の名前なわけですから。はい、歌舞伎ファーストですよね。
(取材・構成/福光恵)
※週刊朝日 2022年10月7日号