2009年に始まった歌舞伎の自主公演「挑む」を、昨年、大好評のうちに完結させた尾上松也さん。歌舞伎のみならず、テレビドラマやバラエティーと多岐にわたって活躍中だが、17年にはディズニーアニメの吹き替え、歌舞伎界初の“プリキュア声優”を務めるなど、じつは声優としても一流だ。「シュレック」などで知られる米アニメーションスタジオ、ドリームワークスの最新作「バッドガイズ」(10月7日公開)では、怪盗チームのリーダー、ミスター・ウルフの声を演じた。その幅広い魅力を支えるものとは?
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──今回「バッドガイズ」で主役を務めた感想は?
絵を見ているだけでもワクワクするような、エンターテインメント性の高い作品。それを吹き替えさせていただいたわけですから、とにかく楽しかったです。収録もあっという間の時間だった気がしますね。
それと、とても驚いたのは、僕以外の吹き替えメンバーが全員、うまいことうまいこと。例えばチョコレートプラネットの長田庄平さんなんて、声だけ聞いたらぜんぜん違う方になっていましたもん。どこかの人気声優さんが担当したと言われても、誰も疑わないと思いますね。
──まさに「この声優さん誰?」の筆頭が、松也さんだという声も多くあります。演じる上で俳優と声優は、やはり別のものですか?
ドラマや映画のような芝居をしてしまうと、吹き替えでは浮くなというのは、何度も吹き替えをさせていただいて感じたところです。
ドリームワークスのアニメーション作品には、とくにそれが言えると思います。キャラクターが大きなアクションをしていることも多く、吹き替えがボソボソ言っていると、作品の流れに乗っていけない。
映像か舞台かと言ったら、吹き替えには、舞台に近いような大きな芝居も必要なのではないでしょうか。そんな大きな芝居もできるような表現の幅は、吹き替えをするときに意識していることのひとつです。
何よりアニメの声優をするときに一番の理想としているのは、尾上松也という存在が見えなくなること。例えば今回なら、ウルフの声から僕の影が一切消えているのがいいなと。そんな没入感を感じていただくことが、声優として目指すことのひとつですね。