さんたちが実践しているのが、「ABA」と呼ばれる心理学の理論に基づいた療育プログラムだ。Applied Behavior Analysisの頭文字をとった略称で、「応用行動分析学」と称される。具体的な目標を立て、スモールステップに分解し、成功体験を積み重ねる。子ども一人一人の学び方に徹底的に向き合うエビデンスに基づいた方法だ。

「大切なのは、障害を持ったお子さんを変えようとアプローチするのではなく、お子さんの周りにいる親御さん、そして支援者がともに学びながら伴走していくことです」(熊さん)

 例えば、幼稚園で運動会の練習が始まり、普段のルーティンが崩れて子どもの癇癪が増えた場合。癇癪(かんしゃく)を抑え込んだり我慢させようと考えるのではなく、園の先生と協力してスケジュールの予告をしたり、家で遊戯のビデオを見てみたり、運動会の部分的な参加を検討したり、本人に合わせた対応を柔軟に考えていくことが必要となる。

「こうした日常の変化に合わせた細かい判断を、親御さんが一人で考えるのは本当に大変です。そこで支援者が、次の見通しを立てながら一緒に考えていくことが重要となります。一口に発達障害といっても千差万別。お子さんやご家庭に合った個別の支援を、早期からしっかり行う体制をつくっていくことが大切だと感じます」(同)

■「保護者頼み」から地域で支えあう仕組みへ

 親の苦悩や悩みを受け止め、施設での子どもの虐待をなくすにはどうすればいいか。熊さんは、地域で支えあう仕組みづくりが重要だと話す。

「今の制度は保護者頼みになっていて、保護者の負担が大きすぎると感じます。また、私たちは早期支援を中心に行っていますが、年齢があがるにつれどこに相談したらよいか分からない、という声を頂くことも多い。問題が重篤化する前に、予防的な支援が行える場が少ないのです。エビデンスに基づく支援が早期に受けられる仕組みや、障害を抱えたお子さんと保護者を地域全体で長期的に見守っていく仕組みが必要ですし、私達もその一端を担わなければという思いです」

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