中間層が所得減に苦しみ、教育費が重くのしかかる。子どもが塾に通うのを断念する場合もある。こうした現状を打開する方策はあるのか。専門家に聞いた。 AERA 2022年9月19日号の記事を紹介する。
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経済協力開発機構(OECD)が実施する学習到達度調査(PISA)によると、日本は小学校から高校までの教育機関に対する公的支出の負担割合がとても低い。18年、国内総生産(GDP)に占める割合は2.4%で42カ国(一部、17年と19年のデータ)のなかで4番目に低い。さらに大学や専門学校などの高等教育では0.44%。これはOECD平均(0.94%)の半分以下だ。
政府は20年度から、大学などの授業料減免と、返済のない給付型奨学金を柱とする修学支援新制度を始めた。だが、全額の支援を受けられるのは「両親、本人、中学生の4人世帯」の場合、年収約270万円未満の住民税非課税世帯に限られる。年収約380万円を超えると支援はない。そのため、貸与型の奨学金を頼りに進学する人が増えている。
国立教育政策研究所が19年度に高校3年生の子どもを持つ保護者に調査したところ、進学後に奨学金が「不可欠」または「必要」と答えた人は、年収400万~650万円未満世帯で71.7%、650万~850万円未満世帯で65.4%いた。
東洋経済オンラインで「奨学金借りたら人生こうなった」を連載中のライター、千駄木雄大さんは、
「今や奨学金は『みんなが借りるもの』。選択肢は広がるが、立派な借金でもある。月数万円の返済があることで、卒業後の生活に躊躇が生まれるのは間違いない」
と話す。認定NPO法人「キッズドア」(東京都中央区)の理事長・渡辺由美子さんは、
「両親がそろっていて、子どもがいる場合、生活が困窮していても何の支援も得られない。その結果、塾に行けず、学力そのものが落ちてくるという事態が起きつつある。いい教育を受けないと貧困が連鎖していく」
と語る。その悪循環はコロナ禍以降、加速しているという。
神戸市に住む中高一貫の私立高校3年、濱田颯太さん(18)は20年春、緊急事態宣言を受けて父が経営する居酒屋が休業した。二つ下の弟を含めて4人家族だが、収入は母親のパート代のみに。沈痛な面持ちで自宅で過ごす父の姿が心に深く刺さった。