人工衛星から送られる太陽風のデータを受信するパラボラアンテナ。NICT敷地内に設置され、常に太陽の側を向いている(photo 小山幸佑)
人工衛星から送られる太陽風のデータを受信するパラボラアンテナ。NICT敷地内に設置され、常に太陽の側を向いている(photo 小山幸佑)

 NICTは太陽と地球周辺の状況を常時監視。太陽フレアの発生予報のほか、地磁気や電離圏に大きな乱れが生じる予測などを行い、航空会社や電力会社などの約8千人の担当者に直接メールで通知している。

 テクノロジーの進化とともに、「宇宙」はより身近になっている。総務省は今年6月、太陽表面で100年に一度の巨大な爆発が起きた場合の「最悪シナリオ」に基づいた被害想定を初めて発表した。それによると、携帯電話や防災無線、テレビが2週間ほど昼間に断続的に利用できなくなる恐れや、GPSの精度が大幅に低下し、カーナビが正常に機能しなくなったり、スマホの地図アプリが使用しにくくなったりするという。

「宇宙天気によって影響を受ける可能性のある社会インフラを保護するため、少なくとも航空、通信、放送などの業界の担当者には、宇宙天気に関する専門知識の取得が必須の時代になっています」

 こう話すのはNICT電磁波伝搬研究センターの石井守研究センター長だ。

3年後に活動が活発化

 太陽活動はおおよそ11年周期で変動する。次に太陽の活動が活発になるのは3年後の2025年ごろだという。前回の太陽活動の極大期には、まだ高度な衛星利用の普及は進んでいなかった。しかし近年、GPSなどの衛星測位が一般的になり、旅客機の運航や離着陸、土地の測量や無人の農作業機械など幅広く利用されている。次の太陽活動の極大期の影響は未知数な部分が多いとはいえ、高度な衛星測位システムを利用する現代社会で宇宙天気予報の重要性が高まっているのは確かだ。(編集部・渡辺豪)

AERA 2022年9月12日号より抜粋

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