『ノコギリ屋根の風景』(蓑崎昭子 桐生タイムス社)
『ノコギリ屋根の風景』(蓑崎昭子 桐生タイムス社)

【群馬】日本の高度成長を支えた繊維産業の遺構フォトルポルタージュ
『ノコギリ屋根の風景』(蓑崎昭子 桐生タイムス社)1650円
シロキヤ書店(桐生市) 佐藤しのぶさん

「西の西陣、東の桐生」とかつて言われたように、群馬県桐生市は人口の大半が繊維産業に関わってきた歴史を持つ。

 ノコギリ屋根とは鋸の歯の形に似た三角屋根の建物で、主に繊維や染色関係の産地に多く見られた工場を指す。北向きで、日中は安定した間接光を得られるため、布の柄や色合わせに適したのである。

 70~80年代の繊維最盛期には、市内に500棟もあったとされるが、織物業の衰退とともに減少し、近年では一部が飲食店や美容院、ワインセラーなどに活用されている。

 桐生市の歴史散策に欠かせない一冊である。

【埼玉】“海なし県”の豊富な魚類を完全網羅した決定版!!
『埼玉県の魚類─見て、読んで、食べる87種の水族館』(金澤光 さきたま出版会)3850円
ならいち(幸手市) 奈良俊一社長

 元埼玉県水産試験場職員の著者が、県内に生息する魚類の生態を現地調査した41年にもわたる研究を、約900点の写真等を交えて解説。

「埼玉県の魚類」と聞くと、普段から「海なし県」を自覚する私たちは少し戸惑いもおぼえるが、埼玉の淡水、川の文化が思いのほか豊かなことに気づかせてくれる。

 また、ユニークな部分としては、魚の生態や特徴ばかりでなく、調理法まで紹介していて、一気に身近なものと感じさせる。

 自然に親しみ、未来へ守り継いでいこうと思わせる一冊。

【千葉】神尾楓珠主演映画が5月に全国公開 市立船橋“神応援曲”の涙腺崩壊秘話
『20歳のソウル(文庫版)』(中井由梨子 幻冬舎)737円
ときわ書房本店(船橋市) 宇田川拓也さん

 入魂の作。それは創作者が旅立ったあとも、受け継がれ、ひとを結び付け、生き続ける。

 本作は、現在も船橋市立船橋高校で運動部の応援曲として演奏されている「市船soul(ソウル)」の作曲者であり、病により20歳でその短い生涯を閉じた浅野大義氏の人生、そして告別式での奇跡を取り上げた、胸と目頭が熱くなること必至の一冊である。

 本年5月には主演・神尾楓珠で映画化されており、あわせて鑑賞されることを強くオススメする。「市船soul」に込められた浅野青年の魂に、ぜひ触れていただきたい。

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