
女性が社会から受けるプレッシャーにはとてつもないものがあります。結婚するかしないか、子どもを持つか持たないか。かといって男性を悪者にしたくはありませんでした。女性同士にも違う視点があり、ときに対立が生まれます。劇中でレズビアンカップルの女性が屋外で授乳をし、他の母親にとがめられるシーンはその象徴です。

正直、この映画がここまで多くの人に受け入れられるとは思っていませんでした。私はアーカンソー州の出身。先に米連邦最高裁が人工妊娠中絶を合憲とした1973年の「ロー対ウェイド」判決を覆したことで中絶が禁止になった土地です。母から「あなた、誰にも撃たれないといいけど」と言われました(笑)。でも多くの人が「似た経験をした」と賛同してくれた。人生で最大のうれしい驚きでした。
この映画が、たとえ自分が経験していないことにも心を寄せ、想像力を働かせるきっかけになってくれたらと思います。自分の体に関して自分がする選択に「恥」を感じることはないのです。(取材/文・中村千晶)

※AERA 2022年9月5日号