各種法律の施行やSNSによる職場の「見える化」で、職場環境が改善している。「ゆるい職場」への変化は、若手にとってメリットが大きいように思えるが、若手の離職には歯止めがかかっていない。一体なぜなのか。AERA 2022年9月5日号の記事を紹介する。
【上司・先輩から叱責される機会が一度もなかった割合はこちら】
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リクルートワークス研究所の古屋星斗主任研究員(35)は、再生された職場環境を「ゆるい職場」という言葉で解説している。
古屋さんのヒアリングに対し、「学生時代と比べて肩透かしに感じています」「まるで親戚の子どものように扱われています」と答える若手もいたという。
調査でも、「上司や先輩の指導が厳しいと感じたか」との質問に、「まったく感じなかった」(25.9%)、「ほとんど感じなかった」(32.5%)が全体の約6割。一方、「いつも感じた」(6.4%)、「しばしば感じた」(13.6%)は合わせて2割にとどまった。また、「職場の上司・先輩から叱責される機会」については、「まったくなかった」(30.4%)、「年に数回程度」(22.3%)が合わせて5割を超えた。
筆者の経験で言えば、昭和の余韻が残る時代、新人は毎日のように職場で怒鳴られた。しかし、仕事終わりに一杯やりながら上司や先輩と腹を割って話せば、リセットとなり、すべて水に流す文化があった。だが今は、コロナ禍でなくともうかつに部下を飲みにも誘えない。若手に辞められると、上司も失点になる。腫れ物に触るようになるのも分かるし、自分が育てられたやり方が全く通用しないがゆえに、若手の育て方に戸惑う気持ちもよく分かる。
しかし、若手にとって良いこと尽くしのように感じる「ゆるい職場」にも課題がある。各種法律の施行もあって職場環境の改善が大幅に進んだはずなのに、若手の離職には歯止めがかかっていないのだ。
■厚労省の見解は
要因について厚労省は本誌の取材に「離職は個別の理由・事情もあることから、各種の法施行の影響等との関係も含めて一概に評価することは困難」とした上で、「就職前の情報が不足していたことによる安易な離職・不本意な離職は望ましくない」と回答。引き続き、若者雇用促進法に基づく職場情報の提供や、新卒応援ハローワークにおけるマッチング支援・職場定着支援に取り組むとしている。