「文句一つ言わず、電話をかけ続けてくれた。そのバイタリティーには目を見張った」
元議員は、この選挙で、圧倒的に票を伸ばし、衆院議員に返り咲いた。浪人中に小学校単位の後援会を作り、どぶ板を徹底していた効果が大きく、勝共連合の電話作戦が、どれほど効いたのかは測れない。しかし、秘書にはこんな印象が残った。
「選挙労務者としてのエネルギーはすごい」
元議員はその後も圧倒的な組織力で当選を重ねた。その足腰の強さゆえに不要になったからか、勝共連合の支援はなくなった。ただ、A氏と、衆院議員とのつながりは逆に深まった。
「秘書になりたい」
選挙後、A氏が事務所側に申し出たのだ。窓口を自らに一本化していた秘書も、議員本人にA氏が教団の信者であり、選挙支援を受けたことを伝え、相談した。議員は、難色を示すことなく、秘書に迎え入れることを認めた。秘書はA氏に言った。
「うちには神様は一人だけだ。もう一人とは縁を切れ」
政治家の秘書にとって「神様」とは、付き従う議員だけ。教団を創始した文鮮明教祖と縁を切るために、統一教会を脱会せよ──。そんな通告だった。
秘書によると、A氏が実際に脱会したかどうかは分からない。A氏はしばらく秘書を続けた後、県議選に自民党公認で出馬。当選を重ね、党県連幹部も経験した。いまも現職である。
A氏を雇い入れた衆院議員は、永田町で出世の階段を上り、党三役や重要閣僚を歴任。政界でも指折りの実力者となった。
ここまで見てきた事例は、議員バッジを失って「弱者」になったタイミングを狙って自民党側に忍びよる教団の姿だった。選挙での「弱さ」が、教団に付け入る隙を与えているケースは少なくないようだ。
■典型例は山本朋広議員
典型例は、衆院神奈川4区を地盤とする自民党の山本朋広衆院議員である。旧統一教会問題に詳しいジャーナリストの鈴木エイト氏が主筆のニュースサイト「やや日刊カルト新聞」によると、2017年5月の教団の集会に出席し、現総裁・韓鶴子氏を「マザームーン」と呼んだとされている。