安倍晋三元首相に対する銃撃事件をきっかけに次々と明らかになった自民党と旧統一教会の関係。両者を結びつけるものは何か。証言で解き明かす。AERA 2022年9月5日号の「自民党と旧統一教会」の特集記事から紹介する。
【写真】旧統一教会の現総裁・韓鶴子氏を「マザームーン」と呼んだと報じられた議員はこちら
この記事の写真をすべて見る* * *
自民党とは「強者をのみ込むブラックホール」だ。筆者は近著『自民党の魔力』(朝日新書)で永田町や地方議員、町内会を分析し、自民党をそう定義づけた。ただ、自民党の中で相対的に劣る「強者の中の弱者」には、頼るべきではない力に手を出すケースもある。安倍晋三元首相の銃撃事件を機に焦点があたる世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との関係だ。
衆院選で落選し、浪人中だった元議員の地元事務所を、30歳前後の男性A氏が訪れた。
1980年代のことだ。元議員の秘書が交換したA氏の名刺には、教団と関連する政治団体・国際勝共連合の、地元組織の幹部であることが記されていた。
東京にある元議員の事務所が勝共連合と話をつけ、間近に迫る次の衆院選で支援をもらう段取りができていた。A氏は、その取りまとめ役だった。
■文句一つ言わずに電話
衆院選は、現行の定数1の小選挙区とは違って、当時は一つの選挙区から、3~5人が当選する中選挙区だった。元議員は前回、次点で落選。共産党候補にも届かなかった。雪辱を期すには「共産主義に打ち勝つ」との意味を持つ「勝共」運動を推進する団体の支援は自然の流れだったのかもしれない。
元議員側の窓口を務めた秘書によると、A氏は既婚。合同結婚式で伴侶を得た統一教会の信者だったという。応援に駆けつけたのは、当初の10人ほどから次第に膨れあがり、最終的には30人ほどに。勝共連合側は無報酬で構わないとのことだったが、「宿泊代ぐらいは賄おう」と元議員側でアパートを4~5室借りた。雑魚寝で、サークルの合宿のようだった。
80年代は、教団の霊感商法がすでに社会問題化していた。秘書は、A氏らの存在や教団の選挙支援について元議員には伝えなかった。元議員の後援会や地元企業などでつくる選対メンバーと、勝共連合側が接点を持たないようにもした。秘書は振り返る。
「勝共連合のメンバーはすべて、統一教会の信者だったのだろう。雰囲気が違ったので、完全に切り離した」
勝共連合側には、電話作戦を担ってもらった。秘書は語る。