『結婚の技術 (単行本)』植草 美幸 中央公論新社
『結婚の技術 (単行本)』植草 美幸 中央公論新社
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 2022年1月にドキュメンタリー番組『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)で放送された「結婚したい彼女の場合 ~コロナ禍の婚活漂流記~」。ミナミさんという女性のリアルな婚活奮闘記は「神回」としてネットを中心に大反響を呼びました。その中で、婚活カウンセラーとして常にミナミさんに寄り添い、叱咤激励していたのが、結婚相談所・マリーミー代表の植草美幸さん。同番組を観た人は、彼女の的を射た言葉の数々が印象に残っているかもしれません。

 そんな植草さんによる新著が『結婚の技術』。年間100~150組のカップルを結婚に導いてきた婚活のプロである彼女は、婚活とは「結婚できる自分になる『技術』を身につけること」だと言います。もう少し具体的に説明すると、「人様が自分をどう見るか、という客観的な視点や、膝を突き合わせる1対1でのコミュニケーション能力など、総合的な人間力を養うこと」(同書より)。これが、現代日本ではあえて身につけようとしなければ身につかない技術になってきているといいます。

 たとえば婚活の現場で、自分の好きなタイプの人とお見合いできないと「ロクな男がいない!」と言う女性がいるそうです。けれど、結婚相談所は本気で結婚を考えている人が申し込むものであり、婚活のデータベースには約6万人もの男性が登録されています。ということは、相談所が"いい男性"を紹介してくれないのではなく、自分が高望みしすぎていることが考えられます。これはまさに、"他人が自分をどう見ているか"という客観的な視点が抜けている事例と言えるかもしれません。

「婚活は魔法ではないので、自分の市場価値と、自分の希望がズレていたらマッチングできないのが現実なのです」

「いい男がいないと嘆くより、いい男があなたを選ぶかどうかを考えて」(同書より)

 ほかにも同書では、植草さんが日ごろからマリーミー会員にかけている言葉の中から27個のフレーズを厳選して紹介。「デートプランに文句を言うなら、自分でリードしなさい」「完璧な結婚相手などいません。欠点は、あって当然です」など、なぜその言葉が必要なのかという理由とともに、「結婚できる自分」になるための心得をわかりやすく教えてくれます。

 同書はすでに結婚している人や婚活していない人にとっては関係ないと思われるかもしれませんが、実はそんなことはありません。なぜなら、客観的に自身を見る技術や物事をうまく交渉していくコミュニケーション術は、婚活に限ったものではなく、仕事や結婚生活、人づきあいにおいても非常に大切なものだからです。人間的な成長につながるという意味では、誰が読んでも役立つところがあり、多くの人におすすめしたい一冊です。

[文・鷺ノ宮やよい]