車体の後部まで「キッチリ」描写

斜め前からズーム流し撮りした都電。24~105mmズームレンズを50mmから30mmにズーミングする間に撮影。車体前部から後部までピッタリ同調している。ズームレンズは回転式と直進式に大別できるが、回転式の方が滑らかにズームできるので、使い勝手が良い。宮の前~小台 キヤノンEOS-1DX EF24-105mmF4L ISII(50mm→30mm)1/125秒 f9 ISO200(撮影/諸河久:2017年1月29日)
斜め前からズーム流し撮りした都電。24~105mmズームレンズを50mmから30mmにズーミングする間に撮影。車体前部から後部までピッタリ同調している。ズームレンズは回転式と直進式に大別できるが、回転式の方が滑らかにズームできるので、使い勝手が良い。宮の前~小台 キヤノンEOS-1DX EF24-105mmF4L ISII(50mm→30mm)1/125秒 f9 ISO200(撮影/諸河久:2017年1月29日)

 次の写真は、斜め前から都電7700型をズーム流し撮りした一コマだ。背景の歩道と古社・尾久八幡神社の伽藍は流れているが、車体前部から後部まではキッチリ止まっている。背景の右端よりも左端の方が流れる度合いが大きくなっているのもズーム流し撮りの特徴だ。

 1/500秒などの高速のシャッター速度を選択して通常撮影すると、行き先表示器のLED文字は確実に切れてしまうが、文字切れが起こらない低速(このケースでは1/125秒)シャッター速度を選択したので「早稲田」の三文字をしっかり描写できた。

「ズーム流し撮り」と「流し撮り」を比較するため、前掲と同条件(50mm・1/125秒)で「流し撮り」した都電。この角度では車体後部まで同調しないのが判別できる。小台~宮の前 キヤノンEOS-1DX EF24-105mmF4L ISII(50mm)1/125秒 f13 ISO400(撮影/諸河久:2017年1月29日)
「ズーム流し撮り」と「流し撮り」を比較するため、前掲と同条件(50mm・1/125秒)で「流し撮り」した都電。この角度では車体後部まで同調しないのが判別できる。小台~宮の前 キヤノンEOS-1DX EF24-105mmF4L ISII(50mm)1/125秒 f13 ISO400(撮影/諸河久:2017年1月29日)

 次の写真は「ズーム流し撮り」と対比するために掲載した「流し撮り」の一コマ。同型の都電を同じ撮影条件の1/125秒で流し撮りしている。

 画面を観察すると、車体前部から中央部までは止まっているが、後部は止まっておらず、背景の街並も左端、右端ともほぼ均一に流れていることが判別できる。

「ズーム流し撮り」の撮影手順

 ズーム流し撮りは本来ムービーのテクニックとして使われている。ムービーでは連続した動きだが、その一コマを単写真として切り取ったのがズーム流し撮り、と理解していただきたい。

 ズーム流し撮りは以下の手順で撮影する。

1. 電車を斜め前から流し撮りする体勢でカメラを構える。

2. フレームの中の電車が常に同じ大きさで収まるように、ズームレンズの長焦点から短焦点へとズーミングしながらシャッターを連写する。同時に電車を追って、腰も回転させる。

3. 電車がフレームからはみ出るまで、ズーミングと腰の回転を止めずにそのまま続ける。

 流し撮りと同じように「ズーム流し撮りする」と意気込むと、ズーミングや腰の回転に力が入ってしまう。肩の力を抜いた自然体で撮影することが肝要だ。

望遠系ズームレンズで「動き」掴む

 画面の中で電車の動きが掴み易い望遠系の80~200mmクラスのズームレンズがズーム流し撮りにマッチしており、135mmから85mmあたりにズーム流し撮りの同調ポイントが点在する。標準系の24~70mmや広角系の16~35mmズームレンズでも手順は一緒だが、画面の中の見かけ上の電車速度が速くなるため、電車の動きが掴みにくくなる。

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