オリンピックや万博が国を挙げた「村興し」であるように、「国葬」もまたその国の勢いや結束力を顕示する側面の強いものです。そういった意味で、今の日本は「元首相の国葬」を出すような国なのかどうか。迷うべきポイントはそこであって、安倍さんが国葬にふさわしい人か否かを判断するのであれば、いっそ国民投票でもしないことには公平な答えなど出ないでしょうし、そんな時間はないからこそ、現職総理の鶴の一声で決まるわけです。
私はなんでもかんでも「税金の無駄だ!」と主張するような貧しい精神の持ち主ではありませんが、そもそも日本の国葬を体験したこともないですし、どちらかというと「昔のもの」「不安定な国のもの」というイメージが強い国葬故に、「今さら思い出したように国葬?」という気持ちがないわけではありません。一方で、「オリンピックを自国開催するよりかは有意義だ」とも思います。
ちなみに「国葬」とは別に、天皇ならびに上皇が崩御した際に発せられる「大喪」という儀式が日本にはありますが、今回この「大喪」と「国葬」を混同したり並列で捉えている人も少なくないようです。そこだけははっきりと区別・認識しておいて頂きたいものです。ましてや政治学者を名乗る方なのであればなおさら。落ち着きましょう。
ミッツ・マングローブ/1975年、横浜市生まれ。慶應義塾大学卒業後、英国留学を経て2000年にドラァグクイーンとしてデビュー。現在「スポーツ酒場~語り亭~」「5時に夢中!」などのテレビ番組に出演中。音楽ユニット「星屑スキャット」としても活動する
※週刊朝日 2022年8月19・26日合併号