さて、副交感神経を引き上げる一番の方法は呼吸法です。呼吸のうち、息を吐くことには、副交感神経を高める働きがあり、息を吸うことには、交感神経を高める働きがあります。ですから、呼気に気持ちを込めて、呼吸を続けると、副交感神経を引き上げることができるのです。気功の世界ではこれを「呼主吸従」といいます。
ところが、この「呼主吸従」を実践しようというときに障害になるのが、コロナ予防のマスクです。私自身、何度も試してみましたが、マスクをしたまま呼吸法を行うのは無理なのです。息が浅くなってしまい効果がありません。マスクの弊害はこれまで何度も書きましたが、「コロナ不調」を克服するためには、できるだけマスクをはずして、「呼主吸従」で呼吸する必要があります。
交感神経そのものにブレーキをかけるには、不必要な情報を無視する勇気を持つことです。情報過多に振り回されるのではなく、必要なことだけに目を向けましょう。そして周りの人を気にしない鈍感力を持つことです。人のことを気にするとストレスが高まります。人との付き合いで鈍感を決め込めば、それだけで、交感神経の高まりを抑えることができます。
帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意」(朝日新聞出版)など著書多数。本誌連載をまとめた「ボケないヒント」(祥伝社黄金文庫)が発売中
※週刊朝日 2022年8月19・26日合併号