僕の午前中の仕事は昨日の夕方から、今日の午前中に届いたメールの返事から始まります。返事を書かなきゃと思ってため込むと、こんなことがストレスを作ることになるので、さっさと片づけて、いつも手ぶら状態にします。端(はた)から見るとせっかち人間に見えるかも知れませんが、絵もせっかちです。描き出したら一気に描いてしまうので一日に100号、一点が、昨日など三点描いてしまいました。つまり三日分を一日で片づけてしまったわけで、今日は終日、何もしない無為の一日になります。そんな日は何もしないでうんと身体と脳を休ませるようにしたいと思います。

 老齢になると老齢時間に従った方がいいと思います。動きも考えもとろくなります。それがいいのです。未知の新しい境地を楽しむ術を心得ましょう。

横尾忠則(よこお・ただのり)/1936年、兵庫県西脇市生まれ。ニューヨーク近代美術館をはじめ国内外の美術館で個展開催。小説『ぶるうらんど』で泉鏡花文学賞。2011年度朝日賞。15年世界文化賞。20年東京都名誉都民顕彰

週刊朝日  2022年8月19・26日合併号

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