
「先に劇中にUCC缶コーヒーが登場したんです。それを企業の宣伝担当の方が見かけて、声をかけてくださった」
■「パチンコ」化は監督が
あくまでも広告目的ではなく、日常の描写として作品に入れていたものが、現実世界に反映されたのだ。逆に09年の「新劇場版:破」公開時には劇中で使われる携帯電話をNTTドコモとコラボして現実世界で発売した。昨今、盛んに行われるようになった劇中に広告商品を登場させる「プロダクトプレイスメント」の先駆けだ。携帯電話のデザインは庵野監督自身が担当した。
04年に登場し、現在15代目とヒットを続ける「パチンコ」とのコラボも庵野監督の一言がきっかけだった。
「パチンコ店の前を通りかかったとき、庵野さんがそこに立っていたアニメのキャラクターののぼりを見て『これ全部、綾波(レイ)にすればいいのに』とつぶやいたんです。『え? やっていいの?』と思いましたが、パチンコになったおかげで普段アニメを見なかった層にも作品の認知が広がりました」
製品企画に使われるキャラクターのイラストは、オーダーを受けてアニメスタッフに描きおろしてもらうことも多いが、製品へのデザイン落とし込みは企業からの提案を監修することになる。可否判断は基本的にグラウンドワークス:がカラーから全面的に任されている。
オファーへのレスポンスの早さも数多くのプロダクトを生み出せる秘訣だそうだ。企画者の熱が冷めないスピードで企画を進めることが重要なのだろう。

■色味に指定はない
キャラクターを登場させず、色味だけでエヴァ世界を表現するなど、製品化において作品解釈の幅が広いのも特徴だ。エヴァといえば初号機の紫と緑のカラーリングが思い浮かぶが、これらの色にも、実は明確な指定はないという。
「PANTONEの何番、CMYK何%などの決まりはないんです。製品の素材や大きさによって、色の見え方はさまざまに変化します。その時々で、その製品にとって一番かっこいい初号機カラーをチョイスしてもらえればいい」