新年の「壽 初春大歌舞伎」(歌舞伎座)では、自身が思い入れのある演目を演じる歌舞伎俳優・中村獅童さん。長男・小川陽喜くんの初お目見得も控えます。作家・林真理子さんとの対談では、陽喜くんの出演する演目や親子のエピソードなどを明かしました。
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林:相変わらずおしゃれでカッコいいですね。
獅童:いえいえ。このあいだ撮った映画が、時代劇で貧相な農民の役だったんで、やせなきゃと思って17キロしぼったんですよ。
林:どうやって17キロも落とされたんですか?
獅童:断食道場に行ったりして、食事を変えて、肉はあまり食べず、魚に切り替えたんです。
林:精悍(せいかん)な感じが増しましたね。今回、「壽 初春大歌舞伎」(2022年1月2~27日 東京・歌舞伎座)で、獅童さんは『一條大蔵譚(いちじょうおおくらものがたり)』の吉岡鬼次郎をなさるんですね。
獅童:はい。20年ぐらい前、「浅草歌舞伎」で初めていいお役をやらせていただいたのがこの『一條大蔵譚』の吉岡鬼次郎で、(中村)勘太郎時代の勘九郎さんが大蔵卿を初役でやったんです。だからほんとに久しぶりなんです。まだ浅草公会堂のお客さんがガラガラのころですよ。
林:あ、そうなんですか。
獅童:でも、情熱だけはどこにも負けないぞという気持ちで、来年も再来年もずっとやりたいということを、当時の松竹の永山(武臣)会長に直談判したんです。僕と勘九郎さんと七之助さんと、いまの(市川)猿之助さん(当時・亀治郎)と(市川)男女蔵さん(当時・男寅)の5人で、渋谷の松濤の会長のおうちに行ったんです。夜、終演後にアポもとらずにピンポーンって。
林:まあ、大胆なことをなさいましたね。
獅童:「僕らいま浅草でやらせていただいてるんですが、まだまだお客さんが入りません。何とか客席がいっぱいになるように一生懸命やらせていただきますので、来年もやらせてください」って頼んだんですよ。