林:すごいですね。そんなことがあったんですか。
獅童:そして「どうやったら若い人たちに歌舞伎を見に来てもらえるだろうね」って話し合って、チラシを改善しようということになって、関係者の方々にお許しを得て、これまでなかったような、みんなで革ジャン着たりして……。
林:ああ、そうでしたね、覚えてます。アイドルっぽいチラシでした。
獅童:あのポスターは読売演劇広告賞をたしかいただいたんですよ。そして僕が映画「ピンポン」(02年)にも出演させていただいて、ワッとテレビに出させていただくようになり、そこからですよね。
林:あのとき、若手が力を合わせていいお芝居をしているっていうことで、だんだん評判が高くなりましたよね。
獅童:いまだに覚えていますけど、舞台の下手(しもて)と上手(かみて)に、「羅漢席」といって、パイプいすを置いたんですよ。お客さんが入りきらなくて。
林:えっ、そんなことって本当にあるんですね。私、初めて聞きました。
獅童:それが3年目かな。
林:話を戻しますが、今回の「壽初春大歌舞伎」は、お坊ちゃま(長男・小川陽喜、4歳)が初お目見得なんですね。お父さまと一緒に写っている写真を見たら、お顔がそっくり、のようでちょっと違うような。
獅童:フフッ。うちのおふくろにも似てるって後援会の人によく言われるし、おやじにも似てる瞬間があるし、僕の子どものときにそっくりだなと思うときもあるし、個性的な顔です。超アジア顔で、西洋にはない顔。
林:お坊ちゃまの初お目見得の『祝春元禄花見踊(いわうはるげんろくはなみおどり)』って、私、初めて拝見する演目なんです。「元禄花見踊」はもちろん知ってますけど、舞踊劇なんですか。
獅童:舞踊ですね。ご宗家(藤間勘十郎)が振付してくださって、陽喜はご宗家のところにずっとお稽古に通っているので、どんなことをするのが好きかが勘十郎先生はだいたいわかってくださっているんです。とにかく見得をきったり隈取したりが好きで、お稽古していても勝手に見得きっちゃったりするんで、ご宗家が考えてくださって、見得もあるし、しかも、むきみの隈取(血気盛んな若者の役に使われる隈取)もあるし、飛び六方もあるし、子どもじゃ考えられない“おいしい”ところをやらせていただくんです。