極端な肉体改造にも慎重な立場だ。昨年1月には、徹底した糖質制限により2カ月で体重を10キロ落としたという、かまいたちの山内健司の減量方法に「ちょっと注意も必要」と自身のYouTubeでコメント。努力は認めつつ、「運動せずにダイエットを成功させ続けることはあり得ない」と指摘し、食事を減らすのは栄養不足で身体が動かなくなることもあるという理由から、「過度な糖質制限をその動画を見てマネしようというのは、非常に危険なのでお勧めは致しません」と呼び掛けていた。

■吉本22期では期待の新人だった

 一方、本業のお笑いでは、辛酸をなめた時期もある。民放バラエティー制作スタッフが振り返る。

「2000年代初めはバラエティー番組やスポーツ特番などでも引っ張りだこでしたが、その後、同じ吉本興業で芸風も似たレイザーラモンHGのブレークで一気に出番が減ってしまいました。その後、2度の“筋肉留学”で約4年間アメリカにいたわけですが、帰国後は誰も彼のことを覚えておらず、ほとんど仕事がなかった。世間からは『過去の人』として見られていましたが、地道に芸人を続けながら、ボディービルでも認知度をあげていった結果、今のように返り咲いた。最近は『紳士的で人を批判しない』『自分の好きなことを貫いている』という彼の人間性も浸透し、見ているほうは安心感を覚えるようになった。それがあるからこそ、スベっても笑いにつながっているのだと思います」

 前出のNHKのケースのように、笑いの神が降りてくることもある。ゲストが街ブラロケを行い、それに千鳥が突っ込んでいくバラエティー番組「相席食堂」に出演したときのこと。案の定スベリまくっていたが、そんな中、通りすがりの外国人に留学経験のあるきんに君が英語で話しかけたところ、外国人から日本語で「英語わからない」と返され、千鳥は大爆笑。SNS上でも「何度見ても笑ってしまう」と好評だった。

 お笑い評論家のラリー遠田氏は、なかやまきんに君についてこう評価する。

「キワモノというイメージが強いかもしれませんが、実は早い時期からその才能を認められて売れていたスーパーエリート芸人なのです。もともと、彼は吉本のお笑い養成所NSC大阪の22期生で、同期にはキングコング、山里亮太(南海キャンディーズ)、ダイアン、久保田かずのぶ(とろサーモン)など才能あふれるメンバーがそろっていました。この中でテレビに出たのが一番早かったのはきんに君で、当時から筋肉芸を確立していました。近年は筋トレがブームになっており、一般人や芸能人が筋トレにハマる例が増えてきました。そんな中で、黙々と筋肉を鍛え続けてきたきんに君もキワモノのイメージが薄れ、むしろその一途な姿勢が評価されて人気が再燃しているのでしょう」

 芸歴は20年を超えるが、芸風は変わらないきんに君。「人を傷つけない笑い」が支持を集める昨今において、好感度の高さは納得といったところだ。(丸山ひろし)

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丸山ひろし

丸山ひろし

埼玉県生まれ。大学卒業後、出版社に勤務し雑誌編集業務に従事。その後ライターに転身し、現在はウェブニュースや、エンタメ関連の記事を中心に執筆している。

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