今作で最もこだわったのが、可能な限り当時の手法で撮影すること。たとえば、最新のCGを駆使するようなことは行っていない。
「CGだと完璧すぎて、パペットやミニチュアに生命が吹き込まれていくような“あの感覚”は再現できない。人形だから、模型だからこその完璧でない部分が大きな魅力です。カメラはデジタルですが、あえてフィルムっぽい質感にするなど、60年代らしさを出せるよう工夫をしています。見た方に、かつて大好きだったサンダーバードが帰ってきた、と感じていただきたいという思いがありました」
今作で重要な役割を果たすのが、国際救助隊の一員でありながらモデル活動も行う貴族の娘で元スパイのレディ・ペネロープ。かつての日本語テレビ版では黒柳徹子が声を担当したが、奇しくも今回は、黒柳の若き日々を描いたドラマで黒柳を演じた満島ひかりがペネロープを演じる。樋口さんは言う。
「ドラマで若いころの黒柳さんが乗り移ったような満島さんが演じるということは、非常に意味があり、ペネロープのヒロインとしての魅力がとてもよく表現されていると感じました」
サンダーバード世代は特に必見の今作に、樋口さんはこんな思いを抱いているという。
「サンダーバードが放送されたのは最初の東京五輪から人類が月に行くまでの間の、人類が科学によって進歩を続け、今日より明日は良くなるという未来が感じられる時代。それから50年以上経ちますが、やっぱりあの当時の感覚が大好きだし、今でも科学や勇敢さを信じ続けたい──そんなことも感じられる映画になっていると思います」
(本誌・太田サトル)
※週刊朝日 2022年1月7・14日合併号