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 人はどうしてパンダに惹かれてしまうのか。パンダ好きとして知られる文筆家でラジオパーソナリティーの藤岡みなみさんが、狂おしいほどの“パンダ愛”を語った。

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 シンシンとリーリーが初めて公開された2011年4月1日の前日、昼の2時に上野動物園に並びに行きました。でも列はどこにもなくて、まさかの1番乗り。大げさなほど早く行ったのは、1972年にパンダが初来日したときに何千人も並んだという空撮の写真が頭にあったからです。「早く行かないと見られない!」と焦っていたんです(笑)。

 私のパンダ好きは小学校低学年のころから。両親の仕事の都合で転校が多かったのですが、何となく好きでパンダが描かれたノートや鉛筆を使っていたら、「パンダが好きな子でしょ」と覚えてもらえたんです。

 5年生のときに神戸に引っ越しました。家から5分ほどの距離に王子動物園があって、パンダの近くに住めるなんて運命だって思いました。それまではキャラクターとして好きだったのが、生き物としてのパンダが好きになりました。王子動物園は小学生が無料で、毎日放課後に通うのが当たり前の生活でした。

 王子動物園のタンタンが思い出もあって一番好きです。手足が短くてフォルムがかわいいし、口角が上がっていて常に笑っているんです。タイヤの中にちゃんと座って、手に持った笹をそろえて食べる姿がすごく人間っぽくて親近感がわきます。

 大人になってからは中国語を勉強するようになって、中国までパンダを見に行くようになりました。中国・雅安のパンダ保護研究センターでの飼育員ボランティア体験は忘れられない思い出です。パンダのご飯を用意して手であげたり、笹を入れ替えたり、ウンチを掃除したり。そこで気づけたのは、たくさんの声色でパンダが鳴くこと。ヤギみたいな声で鳴いたかと思えば、犬のようだったり、のような唸り声だったり、たまにしゃっくりをしたり、何を訴えているんだろうと想像をめぐらせました。

 パンダに触ることもできて、意外と硬いんだろうなと思って頭や肩を触れたら、柔らかかった。ただ、ふわふわをイメージして触ると硬いと思います。例えるなら、ぬいぐるみとたわしの中間くらいでしょうか(笑)。

「パンダって本当は目が怖いでしょ」とよく聞かれます。パンダ好きな人がよく言われることベスト3に入りますね。でも、実際に目の前でよく見てもかわいいんですよ。

(構成/本誌・秦正理)

週刊朝日  2022年1月21日号