「男性も女性も40代くらいから筋肉量の低下が始まります。コロナ禍の運動不足も、体重の増加、筋肉量の低下につながる。基礎代謝量が減れば太りやすくなり、体内年齢も上がります」
老化の瀬戸際にいるのはわかった。運動不足もわかっている。でも、運動しろといわれてもハードルが高い。そんな人におすすめなのが、4分という短時間で済むタバタトレーニングだ。
立命館大学スポーツ健康科学部の田畑泉教授が科学的エビデンスを1996年と97年に発表し、欧米では十数年前からよく知られる。田畑教授が言う。
「タバタトレーニングは、『高強度の運動を20秒間行い10秒間休む』を1セットとし、6~8セット行う。HIIT(ヒート)と呼ばれる高強度インターバルトレーニングの一種です」
■究極のトレーニング
一般的に「楽」から「きつい」と感じる運動の最大酸素摂取量が50~70%。タバタトレーニングでは運動強度を最大酸素摂取量170%にするので、凄まじくハードだ。休憩なしでの高強度の運動は、人間は50秒程度しか継続できない。タバタトレーニングでは10秒の休憩を挟むため、6~8セット継続できる。
タバタトレーニングのメリットは、私たちの体に備わる有酸素性と無酸素性という二つのエネルギー供給機構を、同時にしかも最大限、刺激できることだ。前者はジョギングなどの有酸素性運動で鍛えられ、後者は中距離走や筋トレのような無酸素性運動で鍛えられる。
実験では、トレーニングを開始した当初は無酸素性のエネルギー供給量が多かったが、8セット目では最大酸素摂取量とほぼ同じ酸素を摂取していた。無酸素性供給量の指標である酸素借も、限界まで達していた。まさに「究極の有酸素性運動であり究極の無酸素性運動」(田畑教授)といえる。
酸素摂取量が増えれば、持久力が高まる。持久力が高いと活動量も増え、血管年齢や体内年齢の若返りにつながる。
「そんなキツいトレーニングが自分にできるのか?」という人に朗報だ。田畑教授によると、「タバタみたいなトレーニング」でも持久力を高められることが判明したという。運動経験がない20歳代の女子大学生7人がバーピージャンプを20回、週3回行ったところ、6週間で持久力が平均7%向上した。
ポイントは、運動後のきつさを「楽」「ややきつい」「きつい」「かなりきつい」の4段階に分けた場合、「ややきつい」から「かなりきつい」の強度にすること。目安は週2~3回。運動内容はバーピージャンプでもハイニー(腿上げ)でも反復横跳びでもダッシュでもいいが、体の中で最も大きい筋肉、下肢の筋肉をダイナミックに使うものが望ましいという。運動前後はストレッチを行うことも忘れずに。(編集部・小長光哲郎、ライター・羽根田真智)
※AERA 2022年1月17日号より抜粋