『コロナの時代の僕ら』(早川書房)
『コロナの時代の僕ら』(早川書房)

―――『天に焦がれて』のベルンやテレーザのように、私たちもコロナ下で、旅行やライブ、演劇、外出など、自分の欲望を抑えて生活することを経験しました。コロナを経験した人類が考えるべきことはなんでしょうか。

 まずは、生きていることと健康であることに感謝しなければならないと思います。パンデミックが道徳面や教育的な面に良い影響を与えるとは当初から思っていませんでしたが、コロナ禍について多くの無駄な議論がされています。我々人類は、病気自体を除いては、何かを学ぼうと決断しない限り、苦しみからほとんど何も学んでいません。過去二年のあいだ、私達の文明にはたくさんの気づきがありました。

 コロナ禍は、私達人間の世界を深いところまで炙り出したようです。コロナ禍で見聞きしたことについては、すべてメモを取るようにしています。

 そして、このパンデミックでの悲しい状況が、私たちがもう少し、我々が住んでいる世界は複雑で、私たちにはいろいろな責任があることを、よくとは言わないまでも、もう少し認識できるようになることに希望を捨てていません。

―――日本では、コロナ禍において、貧困率と自殺率、特に女性の自殺率が急激に上がっています。イタリア人も、生活様式や社会の変化を前に、不安を感じているとお考えですか?

 はい、世界の他の国々同様、イタリア人もコロナ禍において、不安を感じています。

 今回のパンデミックで、我々が経験している中で最もバカげたことの一つは、皆同じパンデミックを経験しているにも関わらず、孤独を感じていることです。イタリアがロックダウンに入り、犠牲者の数が毎日恐ろしいほど膨れ上がっていた2020年の春には、一体感がありました。私たちの力を超えたエネルギーが帯電していて、まるで触れるかのようでした。しかし、すぐにそのエネルギーを失ってしまいました。そして当然のように、女性のような、人口構成の中で、ある一部の人たちだけが他の人よりも、より苦しむことがあるのはいつの時代も事実です。死者の数ではなく、たとえば失業数などで、女性の方が多く苦しんでいるのはイタリアでも同じです。

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