太平洋横断を成功させ、市民の歓迎にこたえて行進する堀江さん(1962年撮影)
太平洋横断を成功させ、市民の歓迎にこたえて行進する堀江さん(1962年撮影)

「いまは人生100歳時代ですから、80代であっても健康さえ維持できていれば、どうってことないと思います。例えば、山登りの場合なんかだと、結構体力がいると思うんですけれど、ヨットは風の力を利用して操縦すればいいわけですから、筋力なんかはふつうでいい。特別なことは何もないです」

 日常的なトレーニングも「一切していないですね」と、きっぱり。

「まったく、ふつうに暮らしています。ご飯も、うちの奥さんが出してくれるものなら何でもおいしくいただいています。逆に言えば、嫌いなものはほとんどないですね。ははは」

 どうやら、海洋冒険家のふだんの生活はとても自然体らしい。

「ぼくは今回、たまたま83歳ですけれど、これからは、かなり高齢の人でも1人で太平洋横断することが結構あると思いますよ。例えば、お仕事をリタイアされた方が60代からヨットを始めて、夢を実現する。実際、そんな方がときどきおられるんですよ」と、後進にエールを送る。

堀江さんが太平洋単独横断に成功したヨット「マーメイド」号。93日間の航海でペンキも剥げ落ちて傷だらけになっていた(1962年撮影)
堀江さんが太平洋単独横断に成功したヨット「マーメイド」号。93日間の航海でペンキも剥げ落ちて傷だらけになっていた(1962年撮影)

■新型コロナで予定を早めた

 新造の「サントリーマーメイドIII号」は、60年前の初代「マーメイド号」とほぼ同じ大きさで、全長19フィート(約5・8メートル)。

 船体には太陽電池パネルが設置され、衛星電話やパソコンが使える。

 食事は、湯や水を加えればご飯になる「アルファ米」をメインに、レトルト食品や缶詰を食べるという。

「最初の航海では、ふつうのお米を石油コンロと飯盒(はんごう)を使ってご飯を炊いていたんですよ」と、懐かしむ。食事一つとっても、ずいぶん様変わりしたようだ。

 今回の航海は「最初とは逆コース」で、3月21日(現地時間)にサンフランシスコを出発し、ハワイ・オアフ島の南側を通過して、日本に向かう。6月第1週ごろに拠点の新西宮ヨットハーバー(西宮市)に到着する予定だ。

「比較的、日照時間も長いですし、台風の発生もわずかですから、ヨットの航海としては非常にやりやすい時期だと思います」

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自己満足の航海