バイリンガル教育では、子どもが自由な発想で生み出す新語を大らかな気持ちで受け入れることも大事だ(写真/gettyimages)
バイリンガル教育では、子どもが自由な発想で生み出す新語を大らかな気持ちで受け入れることも大事だ(写真/gettyimages)
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 昨年の話で恐縮ですが、12月31日の朝のこと。日めくりカレンダーに書かれた「大晦日」の字を見て、5歳の娘が尋ねました。「これ、なんてよむの?」

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 わたしはそのまま聞き返しました。「なんて読むと思う? 12月31日を別の言い方をしたものだよ」。娘は「わかんない」と唇をとがらせます。「ヒント、『お』から始まる言葉です」「お??!」。お、お、お……ととがらせた唇でつぶやきながら、娘はやがてこう答えました。「お……おしょうがつイブ……?」

 なるほど! と思わず膝を叩いてしまったのですが、質問は「大晦日」という漢字をなんと読むかだったのでやはりそこは正しくあらないとと思い直し、「おおみそか」というのだと教えました。「でも、おしょうがつイブもいい答えだね。お正月の1日前だもんね」と、ほめ言葉を付け足すのを忘れずに。

 子どもの発想には、時として心から驚かされます。日常的に日本語と英語に触れている5歳の娘と2歳の息子は、二言語の垣根を自由自在に飛び越えて日々新しいことばを生み出します。

 たとえば、「あくボーイ」。生まれたばかりの弟が一丁前にあくびをしている様子を「あくびboy」と表し、それがリエゾンのように縮まってあくボーイ。類語として、ぶくぶく口からあぶくを出す「ぶくボーイ」、ぐんと伸びをする「のボーイ」もあります。

 それから冗談っぽく口にしているのが、「はしるイング」「わらうイング」などの現在進行形。日本語の動詞「走る」「笑う」などに英語の現在進行形を表すingをつけて「走っている」「笑っている」と言いたいみたいなのですが、過去形d(ed)や未来表現willなどの自制は登場しないのが興味深いです。ingは動詞の基本形にくっつければいいだけだから、使いやすいのかもしれません。

 英語には訳しにくい単語を日本語に置き換えることもあります。たとえば「Mommy is よっこいしょing very often」など。わたしがあまりにも頻繁に「よっこいしょ」と口にしているからそんなことを言われてしまったのですが、確かに「よっこいしょ」の言葉がもつ気分を英語にするのは難しい。英語にもyo-heave-ho!という掛け声がありますが古風すぎて現代では滅多に耳にしないし、使う場面も限られます(よっこいしょは物を持ち上げるときや腰を下ろすとき、パソコンを立ち上げるときなどいつでもなんにでも使える……わたしだけかもしれませんが)。 日英バイリンガル同士で話をするなら、そのまま「よっこいしょing」と言うほうが意味が伝わりやすい気がします。

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外来語を取り入れるのが得意な言語