
岸田首相は「経済を成長させて、国民に分配する」と繰り返し話しているが、この30年間、日本の経済は成長していないのである。
2012年に第2次安倍晋三政権が発足し、安倍首相は黒田東彦日銀総裁と組んで、異次元の金融緩和を行い、思い切った財政出動をすることで内需を拡大させ、経済を成長させると強調した。
だが、18年に安倍首相が3選されたとき、内需も拡大せず、経済も成長していない事実を認めざるを得なかった。そこで安倍首相は、日本の産業構造を抜本的に改革し、経済を土台から変革する、と宣言したのだが、安倍首相は途中で辞任せざるを得なくなり、その後も日本経済は成長していない。
フランスのトマ・ピケティ氏を始め、少なからぬ世界の経済学者たちが、資本主義は行き詰まりで、ポスト資本主義を構築しなければならない、と主張しているが、30年間成長しなかった日本経済を岸田首相はどうやって成長させるのか。聞く力を発揮して、国民の疑問に対し広く説明してほしい。
田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年生まれ。ジャーナリスト。東京12チャンネルを経て77年にフリーに。司会を務める「朝まで生テレビ!」は放送30年を超えた。『トランプ大統領で「戦後」は終わる』(角川新書)など著書多数
※週刊朝日 2022年2月4日号