田原総一朗・ジャーナリスト
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 ジャーナリストの田原総一朗氏は、岸田首相が提唱する「新しい資本主義」は実現できるのか、と問いかける。

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 オミクロン株による感染が急拡大し、再び新型コロナウイルスが猛威を振るう中、19日から始まった、岸田文雄首相の施政方針演説に対する各党の代表質問は、やはり新型コロナ対策を中心に進んだ。

 立憲民主党の泉健太代表は、中長期的な新型コロナ対策に関する政府方針の取りまとめが6月では遅すぎると批判し、政府が今国会の感染症法改正案の提出を見送ったことについて、「なぜ後回しにするのか」と追及した。

 対して、岸田首相は「現下の危機対応を行いつつ、これまでの対応を客観的に検証するために必要な期間だ」と述べたが、これには夏の参院選を見据えた狙いが見え隠れしている。

 国民の権利の制限を盛り込んだ改正案が国会での争点となれば、支持率を落としかねない。そうした状況は避けたいのだろう。

 そして、東京新聞は20日の社説で、<十八歳以下の子どもへの十万円相当の給付が昨年九月以降に離婚したひとり親世帯に届かない問題>があると批判した。

<夫の暴力が理由で離婚した母親が子どもを養育しているのに、元夫の口座に給付が振り込まれ、受け取れない場合がある>というのである。

 泉氏は、こうした事例が相次いでいると指摘し、国費で給付金を届けるよう指示してほしい、と改善を求めたが、岸田首相は「迅速に支給するため児童手当の仕組みを活用しており、基準日以降に離婚した世帯への制度的対応が難しい面がある」と取り合わなかった。

 東京新聞は、<首相は施政方針で「『信頼と共感』の政治に向けて謙虚に取り組む」と強調したが、この日の答弁を聞く限り、野党の批判や提案を聞き流した印象が強い。これではとても、与野党論戦を通じて政策を磨き上げるという国会の機能回復にはつながらない>と厳しく批判している。

 立憲の小川淳也政調会長は岸田首相の姿勢を「一見謙虚で、丁寧」と評したが、新型コロナ対策や10万円給付をめぐる再三の方針転換に「優柔不断な朝令暮改」と指摘している。私自身は、岸田首相は「聞く耳」を持ち、野党の主張に柔軟に対応している、と評価している。ただ、課題は岸田首相が強調する「新しい資本主義」だ。

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田原総一朗

田原総一朗

田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年、滋賀県生まれ。60年、早稲田大学卒業後、岩波映画製作所に入社。64年、東京12チャンネル(現テレビ東京)に開局とともに入社。77年にフリーに。テレビ朝日系『朝まで生テレビ!』『サンデープロジェクト』でテレビジャーナリズムの新しい地平を拓く。98年、戦後の放送ジャーナリスト1人を選ぶ城戸又一賞を受賞。早稲田大学特命教授を歴任する(2017年3月まで)。 現在、「大隈塾」塾頭を務める。『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日系)、『激論!クロスファイア』(BS朝日)の司会をはじめ、テレビ・ラジオの出演多数

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