「加齢によりDNAが傷ついて変異が起き、それが蓄積するとがんが生じます。ただ、がんなど異常細胞はたくさんできますが、通常は免疫細胞に見つけられて取り除かれたり、アポトーシスで自死したりするので、がんになることはほとんどありません。ところが、その中で生き残ってしまうのがPD−L1というたんぱく質を持つがん細胞。PD−L1は免疫細胞(T細胞)にくっついて正常細胞のふりをするので、免疫細胞の攻撃を受けません。そのため、がん細胞はどんどん増殖していくのです」

 DNAを傷つける最大の原因は、活性酸素だ。細胞内の器官であるミトコンドリアが酸素呼吸を行い、糖を燃やしてエネルギーをつくり出すのだが、この時に副産物として活性酸素が生じる。小林教授が説明する。

「加齢でミトコンドリアの調子が悪くなると活性酸素が増え、DNAやたんぱく質を錆びつかせてしまう。このため、老化細胞が増え、サイトカインという炎症誘導物質をまき散らします。本来、サイトカインはウイルスや細菌に感染した細胞を攻撃する働きがある。ところが、老化細胞が放出したサイトカインはまわりの臓器の機能を低下させてしまい、がんや糖尿病などの原因になります」

 20年の日本人の平均寿命は女性が87.74歳、男性が81.64歳で過去最高を更新した。一方、元気で生活できる健康寿命(19年)は女性が75.4歳、男性が72.7歳だから、10年前後は病気を抱えながら生きることになる。(本誌・亀井洋志)

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週刊朝日  2022年2月4日号より抜粋

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