とまあ、ミュージシャンがイメージを下げ、芸人のそれが上がり気味という最近の状況。そこには、世の女性の好みの変化も影響している。男性に対し、かっこよさよりかわいさ、あるいは、緊張より弛緩を求めるようになってきているように感じるのだ。
大ざっぱな傾向として、ミュージシャンはかっこよく、ドキドキハラハラという刺激を与えてくれる存在。一方、芸人はかわいげがあり、まったりほんわかという安心をもたらしてくれる。今の日本では、後者のほうが、女性の好みに合うのではないか。
そういえば、かつて、不倫も含めた数々の恋愛遍歴でアイドルキラーとしても名を馳せた後藤次利というベーシストがいる。その理由として「彼の弾くベースが子宮に響くらしい」という説もささやかれた。ちなみに、コブクロというグループ名はふたりの名字を組み合わせたものだが「子宮」の別名でもある。黒田の美声も愛人に響くものがあったのかもしれない。
ただ、そういう刺激より、代わりにナスを食べてくれるような安心のほうがいいという女性も増えつつあるのだろう。
そういう意味で、象徴的なのは金爆のケースだ。エアバンドという形態で笑えるパフォーマンスが売り。それこそ、ミュージシャンなのに弛緩や安心という魅力で人気を得たが、今回の件で、本質が露呈した感もある。
これからもあの方向性を貫くのか、それとも、路線を変えるのか、その結果、人気はどうなっていくのか。モテ男のトレンドを考える点でも、なかなか興味深い存在だ。
●宝泉薫(ほうせん・かおる)/1964年生まれ。早稲田大学第一文学部除籍後、ミニコミ誌『よい子の歌謡曲』発行人を経て『週刊明星』『宝島30』『テレビブロス』などに執筆する。著書に『平成の死 追悼は生きる糧』『平成「一発屋」見聞録』『文春ムック あのアイドルがなぜヌードに』など