AERAで連載中の「この人この本」では、いま読んでおくべき一冊を取り上げ、そこに込めた思いや舞台裏を著者らにインタビュー。
この記事の写真をすべて見る『FOOD ANATOMY(フードアナトミー) 食の解剖図鑑 世界の「食べる」をのぞいてみよう』は、ブルックリン在住のイラストレーター、ジュリア・ロスマンが、イラストと文章で「食の世界」を描いたビジュアル図鑑。アメリカで身近な食材や料理、食文化、歴史を中心に、日本や韓国などのアジア、南米、中東の食も取り上げている。食材の成り立ちや料理の種類、調理法など、知識が深まるだけでなく、美しいイラスト集として眺めても楽しい一冊だ。日本語版の企画を持ち込み、翻訳を手がけた神崎朗子さんに、同書にかける思いを聞いた。
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色鮮やかなイラストと専門知識に裏付けされた文章で紹介されているのは、野菜や果物、肉などの食材、世界の料理、食べ方、作り方など。9章のなかに、「すばらしい穀物」「肉の火入れ」「おいしい乳製品」などの項目が1~2ページ単位で展開されている。
視点は柔軟で、植物学や栄養学からひもとくページがあれば、卵料理やサンドイッチをカタログ風に並べたページもある。心躍る食の世界へ誘われるユニークな図鑑だ。
原著は英語。訳者の神崎朗子さん(51)が惚れ込み、出版社に企画を持ち込んで、日本語版が生まれた。
「この本と出合ったのは、2019年。ノンフィクション翻訳の仕事がずっと続いていたので、少しお休みして時間をつくり、仕事の幅を広げようと考えていた頃です。大人も子どもも楽しめる、紙ならではの美しい本や、念願の小説の翻訳にもチャレンジしたかったんです。小説のリーディングをしたり、絵本やビジュアルの多い洋書を取り寄せたりするなかで見つけました」
原著はアメリカではベストセラー。出版権を半ば諦めつつ問い合わせたところ、運よく獲得。しかし、翻訳から出版までには時間がかかった。
文章は短いが、扱う範囲が食材から調理法、調理道具、歴史、植物学、栄養学、世界の料理や食文化までと幅広い。