1月19日の代表質問。立憲民主党の泉健太代表が岸田文雄総理に大事な提案をしたが、これを大きく取り上げたメディアはなかった。
その提案は、森友事件で公文書改ざんを強要されて自殺に追い込まれた元近畿財務局職員赤木俊夫さんの妻雅子さんが国に損害賠償を請求した裁判に関するものだ。
政府はこの裁判途中に、突然負けを認めて(「認諾」という)裁判を終結させ、雅子さん側に1億700万円を支払った。
私は、30年以上の官僚生活の経験から、これは財務省が真実を隠すために負けたのだと見ている。裁判がこれから証人尋問という段階に入り、それで本当のことが分かると大変だという事情があったのだろう。1億円は大金だが、どうせ国民の税金だと官僚は考える。その判断を岸田総理も認めたのだ。
私は、その直後に雅子さんと話をしたが、心の底から落胆し、政府の酷い仕打ちに憤っておられた。当然の気持ちだ。国民の多くもこの思いを共有するだろう。
普通に考えれば、1億円払うなら、改ざんの責任者が払うべきだ。政府は「認諾」を表明する文書の中で、政府の責任を認めた。ならば、そこには責任者が必ずいるはずだ。責任者不明だが、責任があるというのはおかしい。わからないと言うなら、再調査でそれを明らかにすべきだろう。
雅子さんが起こした訴訟は、国家賠償法に基づく損害賠償請求の裁判だ。これに関する法律「国家賠償法」の第1条第2項には、「故意又は重大な過失があつたときは、国又は公共団体は、その公務員に対して求償権を有する」と書いてある。わかりにくいが、国がとりあえず払った賠償額を本当に責任がある公務員に弁償させる(求償)という意味だ。「わざと悪いことをしたやつがいるなら、国ではなく、そいつに払わせろ!」という自然な国民感情を条文にしたと言っても良い。
公文書改ざんは、「ちょっとした間違い」ではできない。そこには、明確な意思、「故意」がある。