2プラス2の共同発表文。「日本は、国家の防衛に必要なあらゆる選択肢を検討する決意を表明した」という表現も盛り込まれた
2プラス2の共同発表文。「日本は、国家の防衛に必要なあらゆる選択肢を検討する決意を表明した」という表現も盛り込まれた

 北朝鮮の相次ぐ弾道ミサイル発射に対し、海上自衛隊は16年8月からイージス艦1~2隻を日本海に展開。18年6月まで24時間態勢で警戒した。池田氏は「ロシアや中国、北朝鮮は、防衛が難しい変則軌道をとるミサイルや極超音速ミサイルの開発を進めている。イージス艦を増やしていくだけでは対応できなくなっており、専守防衛で国を守るやり方に限界が来ている」とも語る。

 確かに、敵基地攻撃能力はより軽い負担で済む。例えば米軍がシリア攻撃などで使ったトマホーク巡航ミサイルは1発あたり約2億円。海自のイージス艦を改修すれば搭載できる。

 こうした背景があり、岸田首相が年末までの改定を目指す「国家安全保障戦略」など防衛3文書に敵基地攻撃能力が盛り込まれるかどうかに、メディアの関心が集中している。

■中国艦艇は米より多い

 ただ、敵基地攻撃能力にも課題がある。北朝鮮は移動式発射台を約200台、中国はそれ以上の台数を保有するとみられている。日米の情報衛星や偵察機、無人機などを総動員しても、攻撃を全て封じることまではできない。池田氏は「今、日本が置かれている状況は非常に厳しい。敵基地攻撃能力を認めれば全てが解決するわけではない」と語る。

 折木良一元統合幕僚長が主宰し、池田氏も参加した国家安全保障戦略研究会が昨年11月、国家安全保障戦略の見直しに向けた提言書をまとめた。提言書は「反撃能力についても抑止力の一部として、保有することを前提とした政策策定を急ぐべきである」とし、「専守防衛の見直し」を訴えている。池田氏は「敵の攻撃を思いとどまらせるためには、反撃能力を含めた力のバランスを維持することが必要だ」と語る。

 では、2プラス2共同文書は「専守防衛の見直し」まで視野に入れて作られたのだろうか。

 1月7日の発表文と、昨年3月に開かれた前回の2プラス2の発表文を比較すれば、日米の思惑がどこにあるかが浮かび上がる。

 前回と比べ、今回詳しく紹介されたのが「同盟の役割・任務・能力」だ。前回は「協議する」とした程度だったが、今回は共同の情報収集活動や日米施設の共同使用の増加など、さまざまな具体的な行動が盛り込まれた。

 政府関係者の一人は「日本が盾で米国が矛、という従来の役割分担を少しずつ変えていく狙いがある」と語る。

 米議会調査局(CRS)の昨年3月9日付の報告書は、米中両海軍の保有艦艇を比較した。複数の資料から3通りの比較を行った。最も中国に有利なデータでは、20年時点で米軍の297隻に対し、中国軍は360隻に上った。このデータでは、中国軍艦艇数は30年には425隻に達すると予測している。中国の台湾侵攻を想定した米国防総省の図上演習では、米軍がしばしば敗北している。米側では、足りない戦力を補うため、日本が反撃能力を持つことを歓迎する声が上がっている。

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