下川裕治(しもかわ・ゆうじ)
1954年生まれ。アジアや沖縄を中心に著書多数。ネット配信の連載は「クリックディープ旅」(毎週)、「たそがれ色のオデッセイ」(週)、「沖縄の離島旅」(毎月)、「タビノート」(毎月)。
下川裕治(しもかわ・ゆうじ)1954年生まれ。アジアや沖縄を中心に著書多数。ネット配信の連載は「クリックディープ旅」(毎週)、「たそがれ色のオデッセイ」(週)、「沖縄の離島旅」(毎月)、「タビノート」(毎月)。

 そこから情報を集め、発信していく。知人たちと相談した。

「早晩、ミャンマーのネット事情は悪くなる。日本から発信したほうが安全。軍は検閲をはじめる。ダランっていう密告者を使うのは軍の得意技。彼らもチェックする。メールのやりとりは危険だと思う」

 僕が電話系の通信手段で話を集め、それをまとめて、僕が運営するユーチューブで公開することになった。

「ミャンマー速報」である。クーデター直後からはじめていたが、メールのやりとりだった。それをいったん止め、安全な方法に切り替えて2月末に再スタートさせた。

 できるだけ粘り強く続けること──僕らにはそれしかなかった。僕が運営するユーチューブは登録数が3500ほどしかない。メールのやりとりが難しいから、動画も簡単には手に入らない。動画がないユーチューブ? 困って僕は、ミャンマーからの情報をまとめる原稿をパソコンで打つ画面を動画で録画した。

 週1回。なんとか1年続いた。悲惨な内容が続く。軍や警察に追われ、ビルから投身自殺をした若者たち。村人を捕らえ、地雷地帯を進軍する軍の先頭を歩かせる「人間の盾作戦」。赤ちゃんまで人質にとり、軍に反抗する医師を出頭させようとする……。軍は国民を守る存在ではなく、国民を敵にまわして自分たちの存在を守ろうとする。

 1年分の内容をまとめつつある。母国に帰ることが難しくなったミャンマー人と、ほぼ無給で情報を集めてくれた人たちを少しでも支援できれば……と思っている。

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