辛酸なめ子(しんさん・なめこ)/漫画家、コラムニスト。東京都生まれ、埼玉県育ち。武蔵野美術大学短期大学部デザイン科グラフィックデザイン専攻卒業。『新・人間関係のルール』『女子校礼讃』『電車のおじさん』『無心セラピー』など著書多数 (撮影/中央公論新社写真部)
辛酸なめ子(しんさん・なめこ)/漫画家、コラムニスト。東京都生まれ、埼玉県育ち。武蔵野美術大学短期大学部デザイン科グラフィックデザイン専攻卒業。『新・人間関係のルール』『女子校礼讃』『電車のおじさん』『無心セラピー』など著書多数 (撮影/中央公論新社写真部)
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 次々に生まれては過ぎていく流行を、いったん立ち止まって振り返ったら何が見えるのだろう。辛酸なめ子さんの新刊『辛酸なめ子の独断! 流行大全』(中公新書ラクレ、1320円・税込み)には、2014年から昨秋までに流行した250語がイラストと共に収録されている。読売新聞に連載中のコラムに寄稿したものだ。

「政治のような主要ニュース以外の、カルチャー、IT、宇宙などの話を、人間の歴史の一つとして書き残せてよかったと思います。誰かが懐かしいと思ってくれることを書き留められたような気がするんです」

 自撮り棒やユーチューバーが2014年頃から流行していたことがわかるし、風邪でもないのにマスクをして出歩く「伊達マスク」はのどかだったコロナ以前の日々を思い出させてくれる。

 他にも「ブラック女子会」「妻夫木夫妻」「ダサいセーター世界選手権」「天狗にさらわれた少年ブーム」「お尻日光浴」など、文も絵も辛酸さんならでは。

「流行を観察していると、時代の流れに取り残されないでいけそうな気がするんです。現代人には食欲、性欲、物欲などのほかに情報欲があると思います。情報を集めれば集めるほど快感や達成感が得られ、人に話せば承認欲求も満たされます」

 自身も常に情報をインプットしていたいタイプだ。中学時代には原宿の歩行者天国にバンドを見に行き、大人になってからは海外セレブが来るというクラブを訪ねたり、「冬のソナタ」のヨン様が座ったカフェの椅子に座ろうとしたり……。

「パワースポットじゃないですけど、話題の場所に行くとすごくエネルギーがもらえるような気がするんです。新しくできたビルにはすぐ行くようにしていますし、上野動物園の双子のパンダの特別観覧も申し込みました。半分趣味なのかもしれません」

 しかし、情報を詰め込みすぎるとインスピレーションが湧かなくなるので、コロナで時間ができた昨年はボーッとするために近所の公園に通った。それでも何かが気になってしまうのが辛酸さんだ。ハトの群れの中に一羽の白いハトを見つけ、公園に行くたびに追跡した。

「コロナの閉塞感で不安な中、平和で神秘的な感じがして、すごく癒やしてくれたんです。夢の中でシロちゃんという名前だとわかりました。最近は見かけないので、元気だといいのですが」

 コロナで妖怪アマビエが注目され、海外では外出がままならない中、枕を体の前面にベルトで固定し、ミニドレス風に見せた写真をSNSに投稿する「ピローチャレンジ」という珍妙な遊びが流行した。

「コロナへのそれぞれの打開策が出てきて、明るい兆しもありました。人間のけなげさというか、こうやってみんな乗り越えていくんだなという、人類の一体感みたいなものを感じましたね。大変な時代だけど、この本でリラックスしていただければいいなと思っています」

(仲宇佐ゆり)

週刊朝日  2022年2月11日号