落語家・春風亭一之輔氏が週刊朝日で連載中のコラム「ああ、それ私よく知ってます。」。今週のお題は「ポテト」。
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「マクドナルドのポテト、M・Lサイズの販売休止」とな。なんでなんで!?と調べてみたら、「カナダの水害とコロナで物流が滞り、加工済みポテトの輸送が困難」だそうだ。『ポテト難民』続出。フレッシュネスバーガーでは「ウチは国産ジャガイモを使用してるので問題ないでーす。こちらは25%増量しちゃいまーす」キャンペーンが始まったという。仁義なき戦いである。容赦ねぇ、フレッシュネス。ただ、玉ねぎの輸送もダメになって「ポテトは問題ないんですけど……オニオンフライ……やめていいですかね……すいません一旦やめますね……」という事態に! 皆さん大変ですなぁ。そもそも、マックとフレッシュネスのポテトはまるで別物。マックのポテトが食べたくてどうしようもない人がフレッシュネスに浮気しますかね。逆もまた然り。個人的感想です。
小学生の頃、フライドポテトといえば市販の冷凍食品で波型のもの。今のはどうか知らないが、お弁当に入っていた波型ポテトは太い分、腹には溜まるが冷めきっていてパサパサとやたら寂しい味がした。冷めた波型、げんなり。しばらくして、近所……といっても車で10分くらいの場所にマクドナルドが出来た。父がドライブスルーでポテトを買い、ジャスコで買い物をして帰宅した。「ほーら、マクドナルドだぞー」。我が家ではマクドナルドで買った商品自体を『マクドナルド』と呼ぶ。「マクドナルドでマクドナルド買ってきたぞー」。購入してから3時間経ったポテトは、グニャッと曲がり、冷えた湯気で湿り気を帯びた情けない姿。出来損ないの山菜のようだ。細くてしなびたポテトを口に入れる。ムニュしょっぱい。フライドポテトにいいイメージなかったなぁ。
上京後、初めて自分の金でマックのフライドポテトを食べた。揚げたてに降参。「馬鹿にしてスマンかった!」。友達がくれたナゲット用のマスタードソースに付けて食うと「ウマ! なんじゃこら!」。マスタードソースがポテトの感動を通り越してしまった。余談だが、フレッシュネスのポテトを初めて食べた時は「ボーイさん! フォークとナイフを」と手を叩きたくなるような存在感に圧倒された。ポテトは細いほうが好み。