松尾貴史さん
松尾貴史さん

「芳雄さんは、スケジュールさえ合えば、必ず見に来てくれて、アドバイスなり駄目出しをしてくれるようになりました。最後に入院される直前までそうでしたね。ライブに足を運ぶっていうのは、お客さんは、その日の大事なスケジュールを押さえるだけじゃなくて、会場までの道中も時間を費やさなければならない。やる側は、よかったら拍手なり、笑い声なり掛け声なりがもらえて、お金まで払ってもらえる。舞台をやっていると、お客さんほどありがたいものはないと痛感しますね」

 昨年は、永井愛さん作・演出の「鴎外の怪談」で、森鴎外役を演じ、読売演劇大賞優秀男優賞と、紀伊國屋演劇賞個人賞を受賞した。そんな松尾さんの最新出演舞台が、9月から上演される「裸足で散歩」。ニール・サイモンの傑作コメディーだ。

「今回の芝居は、とても王道的な構造だと思うんですね。加藤和樹さん演じる主人公が、あることに気づいて、そこからコペルニクス的転回が起こるという……。基本的に脚本がおもしろいので、役者がそこにどうリアリティーを持って、そのプロセスを見せていくかが、やりがいがあるところだと思うんですけど。僕は、そもそも最初からヘンなおじさんの役なので、今は、『どうヘンにやろうかな?』と考えているところです」

(菊地陽子、構成/長沢明)

週刊朝日  2022年8月12日号より抜粋

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