Netflixといえば、ドラマに代表されるエンターテインメント系の作品が注目されがちだが、実は良質なドキュメンタリー作品も多い。そこで、選者に今観るべき“骨太ドキュメンタリー”を聞いた。
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映画・海外ドラマ評論家の今祥枝さんは、ドキュメンタリー作品の充実ぶりを挙げる。
「アカデミー賞受賞作品や上映されにくい短編、潤沢な資金で制作されたオリジナルシリーズなど多彩。フィクションの世界にハマれない人は一定数いるので、ドキュメンタリー好きの層は厚く、Netflixがドキュメンタリーに力を入れるのも自然なことです」
ドキュメンタリーマガジン「neoneo」編集室代表の佐藤寛朗さんは、視聴機会が限られがちなドキュメンタリーがいつでもどこでも観られる良さを歓迎する。
「配信なら時間や場所を選びませんし、繰り返し観られるのもいい。作品の面白さが予算規模と比例しないことも多いので、大作、小規模作品、ゲリラ的に作られた作品が同列で楽しめるのも魅力」
その上で、ドキュメンタリーの面白さについてこう話す。
「ある現実に直面した人が放つリアクションを丁寧に拾っていくドキュメンタリーは生々しくて人間臭く、正直な部分も出ます。観る側にも同じで驚きや発見があり、感情移入もできますよね。ドキュメンタリーは、『事実は一つだから正解も一つ』と思わず、いろいろな解釈を面白がって観るとより楽しめるはず」
【今祥枝さんおすすめ】
・「汚れた真実」
企業犯罪を扱ったテレビシリーズ。製作総指揮はアカデミー長編ドキュメンタリー映画賞受賞のアレックス・ギブニー。
「1話完結なので、興味があるものから観られます。カナダのメープルシロップの覇権争いや、トランプの娘婿ジャレッド・クシュナーの不正まみれのえげつなさなど容赦ない。ドキュメンタリーが調査報道の役割を果たしていることを実感します」
・「ジェフリー・エプスタイン 権力と背徳の億万長者」
政財界に広い人脈を持つ裏で、少女への性的搾取や虐待を続けた大富豪ジェフリー・エプスタインに迫るテレビシリーズ。
「性的暴行で女性から提訴されたイギリスのアンドルー王子は、エプスタインと親交がありました。綿密な証拠によって明らかになる、被害女性を計画的に陥れ続けてきた事実は説得力があります」