香川真司|シント=トロイデン
長らく無所属が続いた日本人司令塔だが、1月にベルギーのシント=トロイデン加入が決定。自身6カ国目で、背番号10を背負うことが決まった。本人はベルギーメディアで「予想していなかった」としつつも、「自分を本当に必要としてくれるチームに入りたかった。『またプレーしたいんだ』と思えた」と決断の理由を明かしている。
これまでドルトムントやマンチェスター・ユナイテッドなど世界トップクラブでタイトルを掲げてきた32歳の加入に、現地メディアも大興奮。『Het Belang van Limburg』は「STVV史上最も印象的な補強。これほどのスターが小さなハスペンホウに上陸するとは驚きだ」と特集を組めば、ダビド・メーケルス会長も「トップフォームならば何かをもたらすことができるはずだ」と期待を寄せる。
とはいえ、半年以上実戦から離れていることや冬の加入であることなど、条件的には厳しい中でのプレーになる。ピッチでの役割も重要だ。現在のシント=トロイデンは基本的に5-3-2を採用しており、いわゆる「トップ下」的タスクを担うクリスティアン・ブルースはチームトップのゴール関与数(5ゴール4アシスト)を誇っている。香川自身は「今は8番(インサイドハーフ)の役割の方で生きる」とも語っているが、ポジションを掴むことも容易ではないだろう。
それでもドイツやイングランド、スペイン、そして日本代表で輝きを放ってきた彼の姿を、再びピッチで見られることはファンとしては喜ばしい限り。2月5日のコルトレイク戦でようやくベンチ入りを果たした日本史上屈指の“No.10”は、新たな地で何を見せてくれるのだろうか。
田中碧|デュッセルドルフ
川崎フロンターレ、東京オリンピック、そして日本代表。高い戦術理解度と周りの状況を把握する視野、物怖じしないメンタリティで着実に評価を高めてきた田中。すでに森保ジャパンには欠かせぬ存在となった。彼がスタメンを勝ち取ってからワールドカップ予選で5連勝を達成したのは、偶然ではないだろう。
しかし、デュッセルドルフではその真価を発揮しているとは言い難い状況だ。状況把握と気の利いた的確なポジショニングが武器の23歳MFだが、ダイレクトな展開が好まれるブンデスリーガ2部では彼の頭をボールが超えていくことも少なくない。また激しい肉弾戦、特に守備時には一対一の強さが最も求められるドイツで、やや苦しんでいる印象だ。大手メディア『ビルト』はデュエル勝率の低さやスピードのなさを指摘し、「これまでは、このクラブで全く機能していない」と厳しい評価を下している。
だが、状況は変わりつつある。成績不振によってクリスティアン・プロイサー前監督が解任され、新たにダニエル・ティウネが就任。新指揮官の下でチームを作り直す上で、ボールプレーでは他と一線を画する彼の存在は重要となりそうだ。また本人は、日本とドイツの価値観の違いを受け入れ「自分の持っているものを出せない歯がゆさというか、そこはすごく面白い。楽しみながらやっています」と前向きな姿勢を崩していない。
そのポテンシャルはすでに証明済みなだけに、まずは2部の戦いに完ぺきに順応し、レギュラーを確実なものとして、ワールドカップからその先のキャリアまでつながる後半戦を過ごしたい。