2021年12月21日に運用を開始した「SOMPO123先進国株式」という名の商品は業界に衝撃を与えた。信託報酬(投信の保有中に差し引かれる手数料)が競合と比べて破格の0.077%なのだ。再び信託報酬引き下げ戦争が始まるかと思いきや、そうはいかない事情がある。AERA 2022年2月14日号の記事から。
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「SOMPO123先進国株式」は一般NISAでも投資できる。つみたてNISAの対象になるのは「純資産総額50億円以上」「設定から5年経過」などアクティブファンドの最低条件を満たしてから。
この商品を皮切りに信託報酬が再び見直されるという、私たちにとってはうれしい筋書きも描けるのでは? 実際、過去にはインデックスファンドの間でコスト引き下げ競争があった。
まずは松井証券の鈴木翔さんに“現状”を調査してもらった。
個人が自由に買える投信は5183本(22年1月現在)あるが、そのうち信託報酬0.3%未満の低コストインデックスファンドは339本だけ。全体の6.5%にすぎない。
「1~1.5%未満の設定が最も多く、それに次ぐ1.5~3%未満と合わせて全体の約6割を占めます。今後、0.3%未満の設定が爆発的に増える可能性は考えづらいでしょう」
一般的な商売に置き換えてみれば、当たり前かもしれない。破格の低コストファンドは、限りなく原価に近い値段で販売しているようなものだ。大量の資金が集まらない限り、まともな利益にならない。
最近はクレジットカード積み立てが可能なネット証券もあり、たとえばSBI証券では投資額の0.5%がポイント還元される。仮に信託報酬が0.3%でも、ポイント分を後から返せばクレジットカード積み立て分に関しては赤字である。
「しかも投信の信託報酬には三つの金融機関が関わっています。証券会社や銀行などの販売会社、投資対象を選んだり売買判断をしたりする運用会社、資金を管理する信託銀行。これら3社が信託報酬を分け合う形です」